朝鮮学校の経営が苦境に陥っている。在籍生徒数や財務内容などが非公表であり、謎のベールに包まれている運営状況だが、朝総連の機関紙「朝鮮新報」の記事を読むと、おぼろげながら苦しい実態がみえてくる。日本の学校でも少子化による生徒数減少の影響で統廃合といった大ナタが振るわれているが、朝鮮学校再生のための手段は限られており、このままじり貧に推移することが見込まれる。
朝鮮新報7月3日号8面コラム「春夏秋冬」では朝鮮学校の苦境を感じさせる記述が目を引いた。この欄は1面の朝鮮語記事の日本語訳であり、本紙でいえば1面コラム「編集余話」に相当する紙面の顔ともいえる存在だ。
《児童・生徒募集と学校支援事業を巡る事情は地域ごとに異なるが、厳しくない所はない。しかし、必ず解決法はある…。》と、朝鮮学校という言葉は使っていないが、生徒集めに苦労している実態をほのめかしている。
生々しい声紹介
6月に開かれた女性同盟中央主催のオモニ会会長、子育て支援部長会議の参加者の発言として《「もう限界だ。支部では募集の対象を探すためにできることはすべてやった。同胞の子どもの数が急減している状況でこれ以上は無理だと思った」》と、悲鳴ともとれる生々しい声を紹介している。
このコラムは《希望と意欲、生気に満ちた参加者たちの表情が印象的だった。》と結んでいるが、朝総連関係者が朝鮮学校運営に頭を悩ませている深刻な状況が伺える。
同日付の別の記事では、《総連中央教育局の責任のもと、商工連合会と朝青中央、女性同盟中央、中央青商会、中央教育会、教職同中央の代表たちを網羅する「民族教育中央対策委員会」(以下、中央対策委)が発足》とあり、活動目的を《児童・生徒募集活動と学校支援活動において新たな転換をもたらすため》としている。
同中央対策委はこれまでに2回会議を開いた。具体的な内容についての記述はないが、生徒募集についても意見が出たようだ。
「時代遅れ」の意見
同じく同日付紙面で、朝総連千葉支部主催の朝鮮学校に関するトークイベントの記事では、同胞の知人と食事をしたときの体験として《朝鮮学校を見くびり、侮るような言葉を浴び、日本学校に通う同胞学生について「だれだれの息子は東大やら慶応大学に入学した」など日本の大学進学を称賛する一方で、朝鮮学校は時代遅れだという意見を聞かされた。》と、朝総連関係者の間でも、朝鮮学校離れが進んでいる実態を記している。
トークイベント参加者の発言とはいえ、このような事例を機関紙で公にするほど、朝総連内部では朝鮮学校の生徒募集や運営の苦境が、公然とした問題になっているようだ。
6月7日号では、従来の高校無償化中央対策委員会と幼保無償化中央対策委員会を再編する形で、4月に教育権擁護中央対策委員会を新たに発足させたことを報じた。同対策委は「幼保無償化の実現と地方自治体の補助金獲得」を目標としている。
止まらない少子化
文科省が公表した2023年度調査によると、全国の小学校の児童数は前年度より10万2000人減の605万人、中学校の生徒数は同2万8000人減の317万8000人となり、ともに過去最少となっている。
入管庁によると、朝総連支持者が多い外国人登録制度上の「朝鮮籍者」数は12年は4万617人だったが、23年には2万4305人と右肩下がりの減少を続けている。
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