韓国発ミュージカルに注目

日本向け脚色で共感呼ぶ
日付: 2024年07月23日 11時53分

 今月は都内だけでも韓国関連のミュージカルが3作品上演され注目を集めている。〝大切な人との出会いと別れと再生〟をテーマにした作品が多く、シリアスと喜劇が共存している。素直な感情表現が、国境を越えて多くの人びとの心を捉えてやまない。その魅力の源泉について、関係者に聞いた。

今月は都内で3作品を上演

 渋谷区の新国立劇場中劇場で7~21日、フジテレビジョン・読売新聞社の主催でミュージカル『愛の不時着』が上演された。
同作は、今年2月の初演から5カ月という異例のスピードで再演を果たし、その人気ぶりがうかがえる。
原作となったドラマは日本では2020年に配信。コロナ下の巣ごもり生活も追い風となり〝第4次韓流ブーム〟の火付け役となったことは有名だ。
コロナ明けや韓日の関係改善が進み、ファンがより観劇し易いかたちで今日の再演を果たしたことが分かる。

■日本向けにアレンジ

新宿区の伊勢丹会館内レストランで13・14日、東京ハイビーム(吉村ゆう代表)の『私を殺して…』を上演。来場者は観劇と食事を楽しんだ。
『私を殺して…』は表題とは逆に、「自殺をするな」というメッセージを前面に打ち出している(東京ハイビーム提供)

 

 同作は、イ・フングク著『チュギョジュヌンイヤギ』(逝かせる話)が原作。2008年以来、16年間にわたり韓国の大学路で愛され続けているものを日本版にアレンジ。今年の4月から9月まで東京ハイビームがロングラン公演しており、これまで1000人以上の来場者を集めている。
作品のテーマは「自殺」。韓国の原作はブラックコメディーとして描かれ人気を集めているが、日本版はそのままのかたちで上演するのではなく、共感を得やすい脚色を加えている点について、吉村ゆう・東京ハイビーム代表は率直に語る。「著作権交渉のときから韓国の関係者と話し合い、脚色を加えることを公演の条件にしてもらっている。日本人の好みの問題もあり、愛情のあるテーマに脚色している」と説明した。
主演を務めた俳優の宮原奨伍氏も、「吉村代表の勇気ある脚色によって、本作が日本で受け入れられている」と話した。

■素直な感情表現が魅力

豊島区の東京芸術シアターイーストで18日から28日まで、エイベックス・ライヴ・クリエイティヴの主催でミュージカル『ラフヘスト~残されたもの』を上演している。
同作は、韓国近現代文学史上で著名な、李箱(1910~37年)・金煥基(1913~74年)・卞東琳、金郷岸(1916~2004年)らの交際や別離を中心に描く。時代が交互しながら、4人の俳優がそれぞれの人物を演じ分けることにより、臨場感が伝わりやすく観客を当時の情景に誘う。
関係者によると、『ラフへスト』も『私を殺して…』と同じように、日本向けの脚色が加えられているという。
いずれの作品も〝大切な人との出会いと別れ、そして再生〟をテーマにしており、シリアスと喜劇が共存している。
韓国発ミュージカルの素直で大胆な感情表現が、日本に住む多くの人びとの心を捉えている。感動に、国境や文化の違いなどは関係ないという証左だろう。
現在も開催中の『ラフへスト』が作品の土台に韓国文学の代表的人物たちの恋模様について取り上げている点も興味深い。
韓流エンタメに詳しい権容奭・一橋大学大学院法学研究科准教授は「文学が流行り、相手の国のものが読まれるという段階にまで来ると、両国の交流は一段階違ったものになってくる。いま韓国と日本はその域にまで来ているが、あまりメディアがそのような面を伝えようとしていない」と指摘する。
韓日親善の担い手として、注目を集めるミュージカルの今後ますますの発展と飛躍を祈りたい。

韓国近現代文学史の恋模様に焦点を当てた『ラフヘスト~残されたもの』公演の一幕(エイベックス・ライヴ・クリエイティヴ提供)


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