韓日スタートアップ合戦 ~グローバル成長を目指す〝競争と協調〟のスクランブル~ <篠崎 晃>

相次ぐ韓日連携プロジェクト
日付: 2024年07月23日 11時56分

 
大手企業を巻き込む
韓日連携プロジェクト


日本と韓国の国を跨ぐクロスボーダーのスタートアップ競争は、韓日の大企業を巻き込んでスケールアップする様相を呈してきた。
韓国財閥SKグループによる日本の新素材スタートアップTBM社(東京都千代田区)への135億円の大型投資に始まる資本業務提携。EV(電気自動車)用急速充電器を手掛ける韓国のスタートアップEVAR(エバー)社による日本の大手金融会社オリックスからの220億ウォン(約24億5400万円)の資金調達と日本市場開拓などの取り組みが始まり、韓日連携プロジェクトは新局面を迎えている。
とりわけ、2011年創業のスタートアップ企業TBM社が21年7月に韓国SKグループから135億円を調達し、資本業務提携で合意したとのニュースは、日本と韓国のスタートアップ業界で大きな話題を呼んだ。

SDGs時代の環境共生型
企業へ飛躍するTBM


「タイム・ベイスド・マネジメント」というメンテナンス用語に由来する社名を持つ株式会社TBM。同社は石灰石を主原料とする環境配慮型の新素材「LIMEX(ライメックス)」の製造、販売からスタートし、今では使用済みプラスチックの再生材や資源循環支援サービス、温室効果ガス排出量を可視化するサービスなどを手掛け、SDGs(持続可能な開発目標)時代を先導する環境共生型企業に成長。
日本を代表するユニコーン(企業価値10億ドル以上の未上場企業)として世界経済フォーラムのユニコーン・コミュニティのメンバーとして活躍している。
また、TBMはSKグループからの出資以前にも、伊藤忠商事、凸版印刷、大日本印刷、島精機製作所、電通グループ、商工中金、日本政策金融公庫などから数次の資金調達を繰り返し、SKグループとの資本提携によって調達額は合計234億円に達した。
いわゆる”資金調達巧者”であり、SKグループとの提携は日本のスタートアップが海外企業から評価されて飛躍する先進事例となっている。

 生分解性の新素材を開発する
ジョイントベンチャー事業


SKとの資本業務提携は、SKグループ4社が共同出資して日本に設立した投資会社SKジャパン・インベストメント(本社・東京)からの大型投資を受け、SKグループの化学素材大手SKC(本社・韓国ソウル市)との合弁会社SK TBMGEOSTONE(エスケー・ティービーエムジオストーン)社を設立して、生分解性LIMEXを開発、製造する。
このJV(ジョイントベンチャー)事業は、TBMのLIMEX製造技術とSKグループの生分解性プラスチック製造技術を持ち寄り、生分解性LIMEXという環境対応の新材料を開発する韓日連携プロジェクトのモデルケースとして注目されているる。
合弁事業では生分解性LIMEXの量産工場の建設も視野に入れ、30年には100万トン規模の生産を目指す。この取り組みは、日本のスタートアップと韓国の大企業が連携して進めるESG(環境・社会・企業統治)投資ベースの国際プロジェクトでもあり、ESG投資家など、金融関係者からの期待も大きい。


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