韓国に及ぼす円安の影響

輸出・内需ともに悪材料
日付: 2024年07月17日 12時30分

 11日のニューヨーク外国為替市場で対ドルの円相場が急騰し、一時1ドル=157円台半ばと3週間ぶりの高値を付けた。米国の物価上昇率が発表された直後に、約4円も急騰した。インフレの落ち着きを受けて米連邦準備制度理事会(FRB)が9月にも利下げに動くとの観測が高まり、円が買われたとみられる。12日午後の東京市場でドル・円は小幅な値動きとなり、158円前後に。長期化する円安だが、韓国経済にとって、はたしてプラスなのかマイナスなのか。

 

 今回の円相場の急騰は一時的なもので、FRBが大幅な利下げをしない限り、日米間の金利差から円安基調は当面持続するとの見方が大勢を占めている。
円安が長期化するのは、韓国経済にとって歓迎できない。日本の輸出企業の価格競争力が高まり、韓国の輸出に悪影響を与えかねないからだ。韓日の輸出競合度はかつてと比べれば小さくなっているが、競争が激しい自動車・鉄鋼などはいまだライバル関係にある。
影響を受けるのは輸出だけではない。韓国国内でも円安で日本製品の優位性が高まる。内需が縮小している韓国経済だが、他国の製品が安価で買える状況は歓迎すべきではないだろう。
旅行収支の赤字拡大は、経常収支の黒字基調にとっても悪材料となる見通しだ。韓国銀行の統計によると、昨年の旅行収支の赤字は125億2700万ドルで、過去5年の最大値を記録したが、そのうち対日赤字は33億8000万ドルにのぼる。
韓国観光公社の集計によると、今年1~4月に日本を訪れた韓国からの観光客は299万9901人で、昨年同期(206万7670人)に比べ45・1%も増加している。
さらに懸念されるのは、円安がウォン安を誘発する傾向にあり、円とウォンの連動化の動きが強まっていることだ。韓国経済の弱点の一つは通貨の脆弱性。過去に経験した通貨危機をみても、過度のウォン安は国の経済にとってマイナスになりかねない。以前は1ドル=1200ウォンが心理的マジノ線といわれてきたが、すでにこのラインを大きく超えている。
4月29日に円ドル相場が1ドル=160円台に達すると、韓国の外国為替市場ではウォンの対ドルの為替レートが一時1400ウォンを突破し、1年6カ月ぶりの最安値を記録した。さらに1ドル=1600ウォンまでドル高が進むとの見通しも出ている。このラインまでウォン安が進むと、1997年のIMF危機以来となる。
アジア諸国は続くドル高に対し、これまで自国通貨を支えようと取り組んできたが、円の不安定化は、懸念材料だ。97年のアジア通貨危機はタイが震源地となった。機関投資家のタイバーツの空売りから始まり、マレーシア、インドネシア、韓国にも波及した。円安はアジア金融危機の再来を示唆するものではないが、ドル高が長期化すればさまざまな影響が出てくる。
韓国銀行(中央銀行)は11日に開かれた金融政策会議で政策金利を3・50%に据え置いた。韓銀は「利下げのタイミングを検討する」と表明。「インフレ減速傾向を見極めながら実施時期を決めていく」としたが、ウォンは今年、対ドルで約7%下落していることから、利下げを実施した場合、さらなるウォン安が進む可能性を考慮したものと見られる。米国の利下げの時期を見て、韓国も同調するものと予測される。
こういったなか、トランプ前大統領の銃撃事件を受け、米市場では同氏の大統領再選を前提とした「トランプ・トレード」が加速、株価が続伸した。ドルも上昇し、しばらく世界的に不安定な情勢が続くと見られており、今後も為替の動きには韓日とも注意が必要といえるだろう。

 

 


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