尹錫悦大統領が混沌の政局と山積した国政課題を後に、NATO首脳会議(10・11日)に参加する。尹大統領がNATO首脳会議に招待されたのは3回目だ。ファイブ・アイズの豪州首相すら国内政局を理由に今回の会議に出席しないのに、なぜ韓国が参加するのか。先週、NATOと対立を強めているSCO(上海協力機構)首脳会議があった。10番目の加盟国としてSCOに加入したベラルーシはキーウを想定して中国と軍事訓練を始めた。主要諸国が世界大戦を準備中の状況で、尹政権の対応や選択には疑問を感じざるを得ない。
3年連続でNATO首脳会議に出席した韓国大統領は、尹錫悦大統領が初めてだ。尹大統領はハワイの米国インド太平洋司令部を訪問後、ワシントンで北韓とロシアの密着を強く警告するなど西欧諸国との共助を模索するという。尹大統領は、NATOのインド太平洋4カ国パートナー(IP4)の韓・日・豪・ニュージーランド首脳とも会う予定だ。
尹政権の外交を見ると、韓国が置かれた状況を冷静に捉え対処しているのか甚だ疑問だ。尹政権の外交安保陣は当然、ワシントンの方針から自由でない。全てが「固い韓米同盟」に従属する。問題は、韓国の核心安保問題をアングロサクソンの観点から見ており、ワシントンに引きずられている。現実は、EUの権力エリートたちはロシアとの戦争を準備中なのに、西欧人の多数はウクライナ支援やロシアとの戦争に反対している。
この状況を反映するかのように、EUの巡回議長国のハンガリーのオルバーン首相が、ウクライナ紛争解決方案を議論するため5日、モスクワを訪問。その後、8日に北京を訪問し習近平主席と会談した。プーチン大統領は最終的平和を要求する立場を重ねて強調、最終平和案の主な条件として、ウクライナは、4つの新興州から軍隊を完全撤収することと、この地域の非武装化・非ナチス化を再確認した。
韓国にも事態を冷徹に判断する専門家たちがいるが、問題は尹政権の判断と対応だ。尹大統領や側近たちは西欧のプロパガンダに無防備だ。NATOは東西冷戦のときの反共軍事同盟ではない。NATOが過去の敵だったワルシャワ条約機構加盟国を吸収、反ロシアの侵略的な帝国主義的同盟に変わったことを、尹政権は認識していない。
米国は、ロシアと中国を主敵とする。だが、尹政権は、ロシアは敵対、中国は敵対できない現実に直面している。尹政権は5月27日、韓中日首脳会談を主催した。そしてその2週後、尹大統領が中央アジア3カ国(トルクメニスタン、ウズベキスタン、カザフスタン)を国賓訪問した。
この3カ国はNATOと対立するSCO会員国だ。SCO会員国はユーラシア領土の約70%を占め、世界人口の半分の35億人を占める。今回の首脳会議には国連事務総長などが参加した。SCOは参加国が他国と敵対的な同盟を結ぶのを嫌う。だからテュルキエも対話パートナーを超え、SCOに参加するにはNATOを脱退せねばならない。
西欧社会は大混乱だ。ウクライナ戦争への不満と反対が爆発しているが、英国総選でも労働党が大勝、ロシアと全面戦を主張するキア・スターマーが首相になった。実は、ロシアと総力戦を望まなかったリシ・スナクが主戦派のスターマーに戦時内閣の指揮権を渡したのだ。英国議会とWEF(世界経済フォーラム)のどちらかを選択するならWEFを選ぶと公言したグローバル全体主義勢力の下手人と言えるスターマーは就任するやゼレンスキーに電話し全面支援を約束した。
主要諸国が皆まだ募兵制のNATOがウクライナ戦争に派兵するつもりはない。徴兵制の韓国がなぜこのNATOの代理軍の役割を担おうとするのか。