米国が反対する中、韓国独自の核武装論が急浮上している。米国が核兵器で韓国を守る、いわゆる「核の傘」は韓米同盟の信頼の証とみなされてきた。しかし最近、ロシアと北韓が軍事同盟を結んだことで韓国内の空気が一変。核武装により国防を自国でまかなうことを訴える声が相次いでいる。
(ソウル=李民晧)
核武装論は最近の政界において最も注目のトピックだ。特に、今月に党代表選挙を控えている国民の力では、候補者間において差異化を図るためのテーマとなっている。
羅卿瑗議員は「いよいよ我々も核武装に踏み出さなければならない」と最も積極的な姿勢を見せている。羅議員は「核開発が制限される場合、短期間で開発できる準備をすべき時だ」としながら、自身が党代表に当選した際には核武装を国民の力で党論へと押し上げることを表明した。
対する他の候補者らは「韓米間の核共有協定で事実上の核武装と同等の効果が得られる」(尹相現議員)、「直接核武装をすれば国際社会の制裁リスクが大きい」(韓東勲・前国民の力非常対策委員長)、「核武装に先立ち『ワシントン宣言』の実効性を確保し抑止力を強化すべき」(元喜龍前国土交通部長官)などの反応を示した。表現は違えども、いずれも羅議員の主張に反対する姿勢を見せている。呉世勳ソウル市長と洪準杓大邱市長らは、羅議員の核武装論に賛成し、「NATO式核共有」のようなモデルを提示している。
このタイミングで、共和党のドナルド・トランプ氏が米大統領に当選した場合、韓国の独自核武装が現実化するとの予測が出ている。ワシントンの戦略国際問題研究所(CSIS)のビクター・チャ韓国座長は6月26日(現地時間)、外交専門誌「フォーリン・アフェアーズ」に寄せたコラムで「トランプ氏が再び大統領に就任した場合、韓半島が最もダイレクトに影響を受ける上、在韓米軍の撤退を断行する可能性がある。こうした流れはほぼ確実に韓国の独自核武装へとつながる」と主張した。
韓国人の73%が賛成
核武装については韓国国民も容認する雰囲気にある。民間学術団体であるチェ・ジョンヒョン学術院が今年2月、韓国ギャラップを通して発表した「(北韓発)第2次北核危機と安保状況の認識に関するアンケート」によると、「韓半島の周辺事情を考慮した場合、韓国の独自核開発が必要だと思うか」という質問に対し、回答者の72・8%が肯定的な回答に至った。
国立外交院外交安全保障研究所は今年1月、「独自核武装に対する韓国国民の支持分析」との報告書を発表し、核武装に賛成する世論が2022年~23年に過去最高を更新したという分析結果を示した。各種の世論調査で示されたイデオロギー別の賛成論者は、左派系に比べて右派系のほうが韓国独自の核武装に対し高い割合で必要だと答えている。
「真の保険」必要との声
一方の、尹錫悦政権は公式見解を示していない。しかし、その答えは大統領のアクションからうかがい知ることができる。尹大統領は6月25日、米空母ルーズベルト号に乗船した。現職大統領としては朴正煕、金泳三に続く3人目だ。この場で尹大統領は「空母の訪韓は昨年4月、私とバイデン大統領が採択した『ワシントン宣言』を履行したものだ。強力な核拡散の抑止を含め、これは韓国に対する米国の強固な防衛上の公約を象徴するものだ」と説明した。これは、米国の核の傘を通じた両国の軍事同盟で北の核に対応できるというサインを送ったものと解釈される。
韓国では、米国に核の傘を取り上げられるかもしれないという不安が渦巻いている。そのため、米国の善意に任せる「未来保険」ではなく、独自の核武装を通じた「真の保険」が必要だという世論はさらに高まるものとみられる。
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米空母ルーズベルト号に乗艦する尹大統領(写真提供=大統領室)