【映画】『WALK UP』

迷える映画監督を取り巻く女性たち
日付: 2024年06月25日 12時31分

 ベルリン国際映画祭で銀熊賞を5度受賞した、名匠ホン・サンス監督の28作目となる長編。都会の一角にたたずむ地上4階・地下1階建ての小さなアパートを舞台にした人間ドラマ。
郷愁を誘うモノクロとギターの音色©2022 JEONWONSA FILM CO. ALL RIGHTS RESERVED.

 

 映画監督のビョンスは、インテリア関係の仕事を志望する娘のジョンスと一緒に、インテリアデザイナーとして活躍する旧友ヘオクの所有するアパートを訪れる。そのアパートは1階がレストラン、2階が料理教室、3階が賃貸住宅、4階が芸術家向けのアトリエ、地下がヘオクの作業場になっている。3人は和やかに語り合い、ワインを酌み交わすが、仕事の連絡が入りビョンスはその場を離れる。ビョンスが戻ってくると、そこに娘のジョンスの姿はなく…。
アパートの階をひとつずつ上がるごとに、いつしか物語は四つの章へと枝分かれし、ビョンスと彼を取り巻く女性たちの人間模様は予測不能な方向へとねじれていく。果たしてこれは”もしもの人生”を提示したパラレルワールドなのか、それとも…? ユーモアあふれるトリッキーな仕掛けから、芸術家たちの葛藤やささやかな喜び、そして思い通りには行かない人生の本質が浮かび上がっていく。
映画監督ビョンスに扮するのは、ドラマ『冬のソナタ』(2002年)のキム次長役で知られるクォン・ヘヒョ。当時と変わらない、当時以上のダンディーさが際立っている。ホン・サンス作品では『それから』(17年)以来の単独主演、その登場作品のほとんどで”映画監督”役を演じている。最近ではNetflixドラマ『寄生獣―ザ・グレイ―』(24年)に出演、独特の存在感を示した。さらに韓国を代表する名優イ・ヘヨンや、ソン・ソンミ(ホン・サンス監督作品の常連)、チョ・ユニら実力派俳優が脇を固め、迷走するビョンスの人生を彩っている。

公開=6月28日(金)、ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿シネマカリテ、アップリンク吉祥寺、Strangerほか全国順次ロードショー。
公式HP=mimosafilms.com/hongsangsoo/


閉じる