政府が新エネ計画発表

38年までに原発4基増設
日付: 2024年06月11日 10時56分

 世界のエネルギー需要は増加を続けており、2030年には現在の水準の50%増に達すると予測されている。こういったなか、中東での紛争やウクライナ戦争などからエネルギー需給の不確実性が高まった。さらに生成AIやサーバーシステムなど最先端テクノロジーは莫大なエネルギーを消費することから、将来の電力不足は避けられないとの懸念が高まっている。

 

 韓国政府は5月31日、今後15年間のエネルギーミックス計画「第11次電力需給基本計画(電基本)」を発表した。
それによると2038年までに発電量の70%を再生可能エネルギーや原子力発電など炭素を排出しないエネルギー源で賄う方針を固めた。23年は40%未満だった。
計画によると38年までに原子力発電所を4基増設し、合計30基とする。
1基当たり1・4ギガワットの発電能力を持つ原発3基を追加建設。さらに、開発中のSMR(小型モジュール炉)を0・7GW容量で新設する。「電基本」に新たな原発建設計画が含まれたのは、新ハヌル3・4号機計画が盛り込まれた15年の「第7次電基本」以来、9年ぶりとなった。
太陽光発電と風力発電の出力は、22年の23ギガワットから30年までに3倍以上の72ギガワットになると見込んでいる。
産業通商資源省によると、尹錫悦大統領は再生可能エネルギーを拡大して輸入化石燃料への依存度を減らす一方で、原子力発電を重視する方針を推進するとしている。
現在、世界ではエネルギー需給問題が深刻だ。ロシア・ウクライナ戦争を契機とする原油高、イスラエル・ハマスの紛争から拡大した中東不安などで、今後のエネルギー需給の不確実性が高まっている。
さらに世界的な課題となっているのが最先端産業のエネルギー消費量。
産業通産省によると、エネルギー消費は人工知能(AI)向けにデータセンターや大規模な半導体生産拠点が拡大するにつれて急増すると予測されている。
現在、韓国政府は京畿道平沢・華城・竜仁・利川に622兆ウォンを投資して世界最大規模の半導体クラスターを造成しているが、2050年までにこの施設に追加される電力需要だけでも、韓国首都圏における電力需要の4分の1に相当する10ギガワットに達する。
さらに今後、AI産業が発展すればそれに伴い、さらにエネルギー消費が拡大すると見込まれる。
長期的に見ても、エネルギー問題を解決するためには原発の利用は不可欠とならざるを得ない。
カギを握るのが、今回の計画にも盛り込まれたSMR。SMR市場は、33年には724億ドル規模に拡大すると見込まれている。大型原子炉を建設するのは容易ではないことから、今後は規模の小さいSMRが主流になっていくとされる。
SMRは今回の電基本にも含まれているが、韓国では今年3月、斗山エナビリティが鉄鋳物から原発設備完成品までSMRの一括生産システムを実現、すでに昌原SMR工場が稼働した。今後、世界トップを走る韓国原発技術が、SMR市場でも機先を制するか注目される。

 

 

 


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