「ソウル五輪在日顕彰碑」が破損

10月までに修理 ずさんな管理問題
日付: 2024年05月21日 11時29分

 1988年に開催されたソウルオリンピックを記念して建てられた「在日韓国人顕彰碑(ソウル市松坡区)」の随所に亀裂や破損が見られ、名簿塔も本来のレイアウトとは異なっていることが判明した。韓国近現代スポーツの重要な遺産であり、母国と在日同胞社会をつなぐ象徴ともいえる施設の管理体制に不備が見つかったことは問題であり早急な対応が求められる。
(ソウル=李民晧)

 

 現地を視察した結果、在日韓国人後援金寄付者名簿塔六つのうち、二つに亀裂や損傷が生じた状態であることが分かった。亀裂部分にはセメントのような物で埋めた跡もはっきりと見える。
さらには、「88ソウルオリンピック大会在日同胞の支援を称える碑」(88ソウルオリンピック在日同胞顕彰碑)も、石碑の本体を支える土台に白い塗料が垂れているような汚れが付着していた。今回、損傷が確認された碑と塔は、いずれも在日同胞に対する感謝の証として韓国政府が建てた顕彰施設だ。
碑や塔の管理を担う国民体育振興公団(KSPO)に本紙が前記の問題を指摘すると、担当者は「この4年間、オリンピック会館の改修が行われている中、顕彰碑と塔を解体し、新たに建て直す過程で亀裂が生じたようだ。今年10月までには改修作業を完了させたい」と回答した。

 名簿塔のレイアウトも
以前と異なる


さらに問題なのは、寄付者名簿塔のレイアウトも以前と異なっている点だ。元の名簿塔は、顕彰碑を中心に右側から「第二十四回ソウルオリンピック大会在日韓国人後援金寄付者名簿」の刻印が見えるように、反時計回りに配置されていた。しかし現在はそれが左側に移され、名簿の刻印は隠れた状態になっている。塔の配置順もバラバラだ。
これらの不備の改善に向けては、88年オリンピック時に「ソウルオリンピック大会在日韓国人後援会」と民団中央本部が作成した寄付者名簿を基に、一から整え直す必要がある。

 文化財と母国愛の象徴
としての認識必要


今回の件について、88ソウルオリンピック在日韓国人後援会で会長を務めた李熙健氏の孫娘、李薫さんは「88年のオリンピック当時、祖父と父に連れられて現場に赴き、在日同胞1世、2世の母国愛を実感した。在日同胞と母国をつなぐ象徴である顕彰碑と塔が文化財として復元されることを願っている。また、在日同胞のひとりとして今までそれらを鑑みなかったことについて反省の念を覚える」と語る。
当時の民団中央本部団長・朴炳憲氏の子息である朴相圭氏も「遺族として、2世として、ずさんな管理体制に驚き、残念な思いだ。在日同胞の名誉が守られるよう、一日も早く復元されることを願う」と述べた。
88ソウルオリンピック当時、在日同胞は100億円の後援金を集め、今回改修したオリンピック会館とオリンピックスタジアムなどの各種スポーツ施設の建設を支援した。
昨年12月に行われたオリンピック会館のリニューアルオープンから5カ月、顕彰碑は破損状態で放置されてきた。今後は政府に加え、在日同胞社会も「自ら守るべき文化財であり、在日同胞の母国愛の象徴」であるという事実を忘れず、民団も注視していくべきであろう。

 

亀裂が見つかった在日韓国人後援金寄付者名簿塔

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

88オリンピック在日同胞顕彰碑。石碑の本体を支える土台が白いペンキで汚れている


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