韓国人特有の反骨気質と政治情緒

高永喆 韓半島モニタリング
日付: 2024年05月15日 05時44分

 「韓国と日本は似ているようで似てない部分が多い」とよく言われている。その中でも両国は食文化がよく似ている。味噌、醤油、納豆をはじめ、蒸らしてご飯を炊いて食べる国は韓国と日本だけだ。また、おこげを食べる食文化も韓国と日本だけと言われる。
しかしながら、韓国と日本は飲食の味わいが全く違う。韓国料理を大好きな日本の友人曰く「韓国料理は食事後、食べた感じがするから大好きだ」と言われている。和食は辛さがなく、味が淡々としているが、韓食はキムチやチゲ鍋、ゴチュジャンなど刺激的な辛さが味覚をとりこにする。そのため韓流ブームに続き、日本では韓食ブームが広がり韓国料理が人気を集めている。
ちなみに、韓国人の政治情緒は曖昧で柔軟な政治家は人気がなく背を向けられる。はっきりした政治路線で辛さと強いリーダーシップを振りかざす指導者が人気を集める政治風土である。反骨気質の強い韓国人は歴代大統領を亡命、暗殺、収監、自死させた前例が目立っている。韓国の政府は国民の粘り強く厳しい世論を受け入れなければ政権維持が出来ない。
従って盧泰愚大統領は、自分を大統領にしてくれた全斗煥大統領を寺に軟禁した。金泳三大統領は、自分を大統領にしてくれた盧泰愚大統領を刑務所に送った。金大中大統領は、民主化同志である金泳三大統領の息子を刑務所に送った。盧武鉉大統領は、金大中大統領の3人の息子を収賄罪で刑務所に送った。
朴槿恵大統領は李明博大統領に手を触れなかったために彼の子分62人により文在寅に詐欺弾劾された。従って、尹錫悦大統領が李在明代表と文在寅を裁かないと詐欺弾劾に遭う恐れがある。
前政権の不正腐敗を厳しく審判する強力な政権だけが、国民の支持を得て政権基盤を堅固にしている。こういう政治工学こそ、韓国だけが持つ独特の政治情緒であり、政治風土であることが分かる。
しかし、尹政権は野党からあらゆる非難を浴びせられ、足を引っ張られながらも何の措置も取っていない。従って、尹政権の優柔不断に対して支持層が背を向けている。
4月10日の総選挙で、尹政権が過半数を得票できなかったのは、露骨な不正選挙が根本的な原因だ。しかし、最大の敗因は歴代最悪の失政を犯した文在寅と不正腐敗前科4犯の李在明を拘束しなかったことに対する支持層の不満表明とみられる。台湾やフランスのように開票を手作業で行っていたら、政権与党が過半数を得票したはずだ。 不正選挙の背後には「ブラックマネー」に買収された中央選管委と裁判所、言論が隠れているという。尹大統領は大韓民国営業社員第1号と名乗り、国内外で奔走し、過労で鼻血まで流しながら最善を尽くした。
にもかかわらず支持率が下落する根本的な理由は、法と正義を正すという国民との約束を実践に移さないためだ。尹大統領は、義母まで法廷拘束するほど、法と正義を実践に移す決断を示した。このため、国民は尹錫悦大統領を正義の使者、男前と熱烈に支持した。しかし、今は裏切られたと感じる国民が増えている。
文在寅政権の脱原発政策による海外受注の取り消しと韓国電力の負債増加は、韓国経済の破綻の火種となった。特に、文在寅の蔚山市長選挙介入と西海公務員殺害事件、脱北漁師強制送還、板門店のUSB渡し、北韓への不法送金や側近の大規模な不正は、国民の怒りを買っている。
これらをきちんと処断できなければ、かえってやられそうだ。尹大統領は、文在寅政権の検察総長イメージから脱皮し、保守政権としての路線を明確にする必要性がある。
1960年3・15不正選挙は、4・19革命と5・16軍事革命を起こし、不正選挙を主導した内務部長官を処刑した。歴史は常に繰り返される属性がある。尹大統領の座右の銘は「人に忠誠しない」だ。
結局、尹政権は国民の反骨精神に基づく粘り強い抵抗を受け入れなければ、政権存立が難しくなるだろう。

 

高永喆(コ・ヨンチョル)
拓殖大学客員教授、韓国統一振興院専任教授、元国防省分析官。著書に『国家情報戦略』(佐藤優共著、講談社)、『金正恩が脱北する日』(扶桑社)など。

 

 


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