転換点を迎えたウクライナ戦争

西欧に長期間消耗戦の覚悟と能力があるか
日付: 2024年05月15日 04時44分

 ウクライナ戦線が大きく揺れている。
戦場の主導権を握ったロシア軍がハリコフを目指して進撃。ロシア軍の圧倒的な攻勢の前で、予備兵力が使い果たされたキーウ軍が秩序なく崩れている。西欧から多くの援助を受けても戦う兵力がない。ポーランドが、自国に難民として滞在するウクライナの男性を強制送還し、ウクライナ議会が兵役忌避者の銀行口座を遮断、罰金を課す法案を5月中に導入しても、不足した兵力を埋めることはできない。
ロシア内務省は4日、大統領の任期が来週(20日)終わるゼレンスキーをテロと戦争犯罪で指名手配した。ウクライナ国家安保局防委員長のアレクサンドル・リトビネンコも、前大統領のペトロ・ポロシェンコも手配された。彼は、マイダン・クーデター後、ドネツクとルガンスクでロシア系を虐殺したときの大統領で、ミンスク協定に署名、この協定がウクライナを武装させる時間を稼ぐために使用されたと白状した。ウクライナ元財務長官のアレクサンドル・シュラパックや元中央銀行長のステファン・クヴィフなども手配者リストに載った。
ロシアが彼らを指名手配したのは、もはや戦争の勝敗が明確になったため、彼らを交渉相手と認めず、戦争犯罪で断罪するという意図であると見られる。
5回目の任期が始まったプーチン大統領は12日、内閣を改造した。
ショイグ国防長官を経済専門家のベロウソフ第1副総理に交替した。戦争が、戦場での戦いよりも、経済戦争へと移っている転換点を迎えたことで、戦争指導部を新たにする措置だ。
無限の戦争を望むNATOとの長期戦、消耗戦に対応するものだ。
2020年から内閣を率いるミハイル・ミシュスチン総理は留任した。ワレリー・ゲラシモフロシア軍参謀総長、セルゲイ・ラブロフ外務長官も留任だ。
ロシアの国防費は特殊軍事作戦前のGDP3%から6・7%に増えた。まだ旧ソ連時代の軍事費には及ばないが、西欧との長期消耗戦のためには国防費や国家資源の動員・管理はもっと大事になる。
NATO、特に米・英は長期戦、消耗戦、あるいは核戦争を覚悟したかのように行動している。西欧が長期的経済戦、消耗戦をする覚悟と能力があるのかは疑問だ。だが、ロシアは覚悟している。
アフリカのニジェールから撤収する米軍基地にロシア軍が入るというのが現実に起きていることだ。


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