日本でGWを迎える頃、両都市では新緑が美しく、初夏の清々しい陽気に包まれる。この時期は登山や森林浴などのレジャーに絶好の季節だ。今回は都心から近い場所で楽しめる自然散策スポットを紹介したい。
だだっ広い関東平野のなかで、東京湾に接する区部からは山々は遠く離れた存在だ。だがソウル市内には海抜300メートル以上の山が十余を数え、都心から地下鉄に乗り、30分足らずで本格的なトレッキングが楽しめる環境だ。車内では週末を中心にカラフルな登山服をまとったハイカーたちを目にする。
北漢山
ソウル都心で本格的な登山が楽しめる場所としては、北漢山(836メートル)を中心とする北漢山国立公園が挙げられる。道峰山(740メートル)もこの国立公園内に位置して、ともに多様なトレッキングコースがあるが、奇岩怪石なども見られる岩山の様相だ。韓国では山麓に寺院が多く、旧暦4月8日の釈迦誕生日の頃には、登山口付近に吊るされた色とりどりの提灯が新緑に映えて美しい。
東京23区には登山を楽しむほどの山は存在しない。都心から電車で1時間ほどの奥多摩には東京最高峰の雲取山(2017メートル)があり、飯能方面の奥武蔵には登山ビギナーや小学生が遠足で訪れるような低山が多く、バリエーションに富んだ形で登山が楽しめる。
韓国の登山での行動食はキンパプやゆで卵、果物などが多いが、水分補給を兼ねてキュウリを持っていくことは特徴的だ。山頂などで気軽に飲めるマッコリも好まれる。登山客にとっては下山後の一杯も楽しみのひとつで、都会の登山口付近には飲食店や屋台が充実している。
無人で走る牛耳新設線の終点・北漢山牛耳駅や、地下鉄1号線・道峰山駅周辺からそれぞれの登山口までの間に飲食店がひしめき、特に休日の午後ににぎわう。そこでは豆腐キムチや豆腐チゲなどの豆腐料理、パジョンのようなチヂミ類、鶏を水炊きにした白熟などが提供され、マッコリやビールで喉を潤しながら、登山の疲れを癒やす。
高尾山
東京の軽登山の代表といえば、八王子にある高尾山(599メートル)の名が挙がる。中腹にあるケーブルカー終点付近では、夏季を中心にビアガーデンが運営され、そこから東京都心の夜景を望む。登山口も含めて蕎麦店が多く、すり下ろした山芋をかけたとろろ蕎麦のほか、麦とろ飯は定番メニューだ。他にも古くから山岳信仰で有名な青梅の御岳山(929メートル)の山頂には武蔵御嶽神社があり、山にはロープウェイも通じるが、山腹の駅から神社へ向かう参道の茶屋では蕎麦やうどんが味わえ、参詣客が泊まれる宿坊では釜飯や懐石料理なども愉しめるようだ。
行政では登山客に向けた案内を充実させている。ソウルでは北漢山牛耳駅から徒歩5分の場所に2022年にソウル都心登山観光センターを設置した。ここでは日本語を含めて外国語対応可能なスタッフによる案内があり、登山客のためにロッカーやシャワー室を設け、外国人観光客には廉価で登山用具の貸出を行っている。一方、東京の高尾山や御岳山などの山中に設置されたビジターセンターでは自然や歴史を紹介することに主眼を置いているようだ。韓国でハイカーが多い登山口付近には飲食店のみならず、登山用品店が多い。また都心では鍾路5街駅近くに登山用品店が密集し、東京では大学が多い御茶ノ水周辺の神保町・小川町あたりに登山・スキー用品店が多い。
山登りは少々ハードルが高いと思う方は、渓谷の散策であれば気軽に楽しめるだろう。北岳山麓の白砂室渓谷や、北漢山へ続く道にある牛耳洞渓谷などには清流が流れ、散歩がてらに歩ける。東京ならば世田谷区の等々力渓谷が都会のオアシスで、いずれも森林浴に最適だ。薫風の季節、新緑を楽しみに出かけてみてはいかがだろうか。