先月10日に投開票が行われた国会議員総選挙で争点の一つとなったのが物価高。ウクライナ戦争の長期化は原材料・原油高などを招き、世界的なインフレを引き起こしている。さらに中東情勢の悪化により、インフレ抑制がさらに厳しい状況になっている。韓国でも高金利を維持しインフレ抑制に注力しているが、物価上昇率は高止まりしている状況だ。
経済協力開発機構(OECD)が集計した資料によると、2月の韓国の「食料品および非主流飲料」物価上昇率は6・95%でOECD平均(5・32%)を大きく上回った。韓国の食料物価がOECD平均を超えたのは、ロシアのウクライナ侵攻直前の2021年11月以降、2年3カ月ぶりのことだ。
野村證券によると、年初から3月までの月平均消費者物価指数(CPI)上昇率を米国、日本、英国、カナダ、ドイツ、フランス、イタリア(G7)、ユーロ圏、台湾、韓国で比較した結果、韓国は3・0%で英国3・55%、米国3・3%に次いで3番目に高かった。特に果物価格の上昇率は36・9%で最も高く、2位の台湾(14・7%)の2・5倍だった。野菜価格の上昇率も10・7%で最高だった。韓国銀行は4月22日、「2024年3月の生産者物価指数」を公表したが、それによると白菜36・0%、タマネギ18・9%、豚肉11・9%、海苔19・8%、リンゴ135・8%、キャベツ51・6%とそれぞれ大幅に値上がりした。リンゴ1キロの価格は主要95カ国・地域中1位でリンゴの他にバナナ、ジャガイモ、オレンジの価格も韓国が最も高かった(NUMBEO調べ)。
世界的なインフレ傾向は前述の世界情勢の混乱や各国がコロナ支援金を市中にばらまいたことにもよるが、韓国では前文在寅政権による所得主導型経済政策の負の遺産が表出してきているともいえる。リンゴの価格が上昇した理由は、生産量が急減したことが大きな原因だが、それだけではなく農業カルテル、流通カルテルに深刻な問題があるとの指摘も聞こえる。
エネルギー価格の高騰も懸念材料だ。3月時点での韓国電力公社と韓国ガス公社の負債総額が約250兆ウォン。23年度の両社の利息費用は、1年前より2兆3000億ウォン増の6兆ウォンで史上最大となった。
経営正常化のため昨年、電気料金の引き上げを数回にわたり行ったが、中東の混乱が続くようであれば、さらに厳しい経営状況に陥ることは確実だ。大幅な値上げも議題としてあがってくるかもしれない。
エネルギー関連項目を加重平均して算出した消費者物価上昇率(野村證券調べ)を見ると、韓国は1・1%で、フランス(2・7%)に次いでOECD加盟国の中で2番目に高かった。特に2月の国際原油価格の上昇分が本格的にガソリン・軽油価格に反映されだした3月の上昇率2・9%は最高値を記録している。
物価高騰は止まらないが金利を下げるわけにはいかず、打つ手がないのが現状だ。不景気・高金利・物価高による生活の苦しさはしばらく続くと見られる。
アジア開発銀行(ADB)は2~5日、、ジョージア・トビリシで年次総会を開催するが、インフレ対策について意見交換する。またそれに先立ち韓国、日本、中国の3カ国と東南アジア諸国連合(ASEAN)の財務相・中央銀行総裁会議を3日に開催する。
ADBは4月、アジア太平洋46カ国・地域(日本などを除く)の24年のインフレ率を3・2%と予測。前年からインフレが1・1ポイント抑制された23年に比べ、24年は0・1ポイント減とほぼ横ばいを見込んでいる。
韓国企画財政部は中東情勢の混乱による国際原油価格の上昇など不確実な要素はあるが、年末まで物価は2%前半台の安定的な流れを見せるとし、ADB平均値より低いインフレ率を予測しているが、楽観視できない状況といえる。