歌が歌われた時点で、すでに持統天皇の息子である草壁皇子は27歳で亡くなり、孫の文武天皇も24歳で707年に亡くなったため、皇室は子孫(跡継ぎ)が少なくなった。子孫断絶がいつ起きても全くおかしくなかったのである。
「之松之」は、持統天皇の子孫たちの棺が続くことと解読せねばならない。「之」は万葉集で葬儀の行列を意味する。松は前述したように棺である。葬式の行列が次々と通り過ぎる、つまり死が続くようにと祈っているのである。血統を絶やせと祈っているのだ。
「姫島」も固有名詞法をもって解く。高貴な女性が治める島、つまり日本のことだ。後継者になる男たちが相次いで亡くなるため、持統・元明・元貞など女性天皇たちがかろうじて皇位を継ぐことになった。
そして持統天皇の子孫は絶たれてしまい、光仁(こうにん)天皇が770年に即位することになる。 光仁天皇は天智天皇の孫である。壬申の乱(672年)で絶たれた天智天皇の皇統が、98年ぶりに復活したのだ。結果的に天智天皇系が復活した。万葉集の歌詞を文字通り追っていたら、228番歌には恐るべき内容が隠されていた。
万葉集の核心は第1巻(84作品)と第2巻(150作品)だった。まず歌の配置が尋常でない。秘密の歌が、第1・第2巻の234作品の締めくくりの部分に収録されている。228番のような内容の歌は他にもある。
万葉集は単に多くの歌を無作為に集めた歌集ではなかった。持統天皇の子孫を断絶させ天智系皇統の復活を祈る歌を選別して収録した驚くべき本なのだ。万葉集は一種の巨大な大河ドラマとさえ言えよう。
それが真実なら衝撃的だ。私たちが知らなかった、万葉集に隠されていた本当の目的が明らかになるからだ。万葉集の新たな解釈が急がれる理由だと言える。私たちは万葉集を完全に間違えて読んでいたのである。
万葉集の歌は魔力を持った歌だ。歌人たちは願い事があれば、それを歌にした。天神地祇が歌に感動して歌人たちの願いを叶えてくれると信じたのである。万葉集の歌は一つ一つが願いを叶える力を持っていた。
複数の歌を集めると、力が集約され怪力を持つ構造だった。まるで多連装ロケット砲のようだ。1発のミサイルと4516発(万葉集総作品数)のミサイルの持つ破壊力を想像してほしい。
万葉集1、2巻には234の歌が入っている。
歌は怪力を得た。その恐るべき力が、持統天皇の子孫の血統を絶ったのだろうか。万葉の神は、壬申の乱以降、空を見るに堪えられず、笠で顔を隠して生きねばならなかった「天智系」の子孫たちの復活の夢を叶えてくれるのだろうか。
228番歌は当然、歴史の中に消えるべき秘密の歌だった。ところが、その歌が万葉集に収録され、公開された。
誰が万葉集に収録したのか。それは偶然なのか、それとも意図的だったのか。筆者は千年を流れる飛鳥川のほとりに立って、万葉の神からその答えを聞きたい。
衝撃の万葉集、228番歌<了>