尹錫悦政権が憲法遵守と法治を守れず、国政の主導を事実上放棄した状況が進行中だ。尹大統領は4月29日午後、わずか20日前まで、つまり総選挙の当日(4月10日)まで「重大犯罪人」と呼んだ「共に民主党」代表の李在明と大統領室で向かい合った。茶談の形だが、複数の刑事事件で裁判を受けている李在明を認める尹大統領は事実上、政局の主導権を渡したといえる。韓国大統領は自ら招いたレームダックで国家を漂流させている。
尹大統領は1カ月後、就任2年になる。ところが任期を3年も残して統治力、リーダーシップに決定的な打撃を受けた。特に国家を導くビジョンが見えない。いやビジョンの前に、大統領の責務に対する概念、認識がないようだ。大統領はまず自分を政治的に支えてくれる確固たる支持層も作れなかった。
尹大統領は、大統領職が国民と国家に対する奉仕者であるという意識がないようだ。張寅鎮国家安保室長が4月27日テレビ放送を通じ、国民が聞きたかったロシアとの関係などについて分かりやすく説明した。国民の立場で、尹政権の政策に同意しても、同意しなくてもこのような説明を聞くのは貴重な機会で、当然の権利だ。国民は大統領から直接聞くべき話を安保室長から聞いた。
国際情勢が激動する中、習近平は米国を牽制するため来週、ヨーロッパへの外交戦に出る。中国外交部は習近平が5日から10日までフランス、セルビア、ハンガリーを訪問すると発表した。習近平は7日と8日はベオグラードを訪問する。 習近平が訪問する7日は1999年、NATOがベオグラードの中国大使館を空襲し、記者数人が死亡、20人余りが怪我をした日だ。
9日はウクライナ戦争でNATOを相手に勝利を収めているロシアの戦勝記念日だ。習近平が日程でモスクワには行けず、プーチン大統領が、新しい任期が始まり初めて北京を訪問、両国間の無制限のパートナーシップを強化する予定だ。
フランスのマクロン大統領は、欧州議会選挙の遊説演説(4月25日ソルボンヌ大学で)で、欧州は米国の属国から抜け出すべきだと演説した。フランスはこれまで度々米国に距離感を表わしてきたが、NATOの未来を考えさせる発言だ。
フランスは、ロシアに対する敵対的な姿勢を強化するほど、中国との関係は重要になる。米国の意向だけについて行けない。西欧は自らのヘゲモニーの喪失をとても我慢できないように見える。だからといって、これまでの西欧が主導した国際秩序が続くのだろうか。
特に彼らが誤って起こしたウクライナ戦争で軍事的、経済的にロシアとその支持勢力(グローバルサウスなど)を制圧するという目標は無謀だ。米英などが未練を捨てられない、ロ・中をはじめ、グローバルサウスを服属させられるとの考えは妄想と言うしかない。韓国は西欧が執着する「規則基盤秩序」を尊重すべきか。
尹大統領がこの2年間、法治を回復し不正選挙を調査し、また総選挙の前に医師たちを敵に回す荒唐な戦いをしなかったら、就任2年で権力の主導権を失うことなどなかったはずだ。
尹大統領に複雑な職務を担当できる分別力、決定能力などが果たして備わっているか疑う国民が少なくない。