8~14日、傘寿を迎えた画家の呉貞子さん(紅瓶は号)が、都内の会場でこれまで描き続けてきた作品80点を展示した個展を開催。期間中150人が会場を訪れた。
呉貞子さんは物心がついた頃から絵への関心を持ち続けており、個展の冒頭には14歳の頃に描かれた油絵”静物”が飾られた。住み込みの仕事を始めていたという当時、同じ社宅に住んでいた職場の上司から「電気を消して、早く寝るよう」求められながらも、月明かりの下で描き続けたという。「描きたくて仕方がない情熱に駆られていた。寝る間を惜しんで絵を描いていた時期だった」と回顧する。
翌年15歳の時に、2021年に亡くなった呉炳学画伯と知りあった。「絵の初心者だった私にとってこの出会いは大きなものだった」としている。呉炳学画伯から本格的に絵を教わる機会が持てたのはそれから20年ほどを経てからであるとし、仕事の傍ら絵を描くスタイルがその後も続いたという。
呉貞子さんの作品の中で有名なのは有機野菜や果実を題材にした作品だが、育児の合間に子どもたちの寝顔を衝動的に描いたというスケッチを、個展の作品の中で最も気に入っていると説明した。
呉さんはまた「良き師匠に出会えたのも、子どもたちの絵を描いたのも、画家として仕事にしていたのではなく、ただ好きだったからこれまで自由に続けてこられた。普通の主婦でも趣味にしていた絵をきっかけに多くの人に知ってもらえるようになったので、誰でも何かを継続していれば世の中を変えられるという一例とみて欲しい。これからも自由に描き続けたい」と期待を述べた。
子育て時代の作品への好感が多かったと個展を回顧する呉貞子さん