世界的に厳しい経済情勢下、韓国には積極的な経営姿勢を示す企業がある。
(1)サムスン電子
サムスン電子は約8兆ウォンを投じて、多国籍企業であるジョンソン・コントロールズの冷暖房空調(HVAC)事業部の買収を検討中とされる。サムスンが今回の買収を実現させるならば、2017年の電装・オーディオ専門企業であるハマーン・インターナショナルを買収以来、8年ぶりの大型M&A案件となる。ジョンソン・コントロールズの冷暖房空調事業部に対して付けられた価格は60億ドルと見られているが、まだ公式的な見解を示していない。
(2)LGグループ
LGグループは28年までの5年間に、国内に約100兆ウォンを投資し、人工知能(AI)やバイオ、クリーンテックといった先端技術の他、バッテリーや自動車部品、次世代ディスプレーなどの成長分野に投資額の半分を充て、競争力の差異化を図る戦略を示した。株式会社LGが3月27日、定時株主総会でこうした中長期投資計画を発表している。LGグループは総投資額の65%を国内に振り向けることになり、韓国経済全体の底上げも期待されている。100兆ウォンのうち約55%を研究開発(R&D)に投じ、重要素材の研究開発施設、スマートファクトリーなど製造の拠点を国内に築く計画だ。
(3)SKハイニックス
SKハイニックスは、米国・インディアナ州に40億ドルを投資し、人工知能(AI)半導体核心部品である高帯域幅メモリ(HBM)生産基地を建設することを検討している。同社がHBM生産基地を海外に建設するのは今回が初めてとなる。また、本プロジェクトが推進されれば、28年には生産工場を稼働。その結果、800~1000人の新たな雇用の創出が予想されるとの見方が出ている。
(4)現代自動車グループ
現代自動車グループは3月27日、国際競争力の強化を見据えて、26年までの3年間に国内で計8万人を採用し、68兆ウォンを投資すると発表した。こうした大規模採用・投資計画による雇用創出効果は19万8000人を上回るとも見られている。
(5)大韓航空
大韓航空は3月21日に理事会を開催し、欧州の多国籍航空企業であるエアバスと先端中大型航空機A350を33台購入する契約を締結すると発表した。A3501000を27台、A350900を6台で、全体購入金額は137億ドルに達する。「空のホテル」を作りたいとして意気込んでいる。
(6)ポスコグループ
韓国財界5位、世界的な鉄鋼メーカーであるポスコグループを新たに率いる代表取締役会長にチャン・インファ元ポスコ社長が選出された。グループの持ち株会社であるポスコホールディングスは3月21日、株主総会でチャン氏の社内取締役選任案を承認し、続いて取締役会で同氏を新会長に選任した。チャン氏は新ビジョン「未来を開く素材、超一流に向けた革新」を掲げた上で、「国民から信頼と愛を得た誇らしきポスコの姿を取り戻す」と意気込みを示している。具体的には、鉄鋼事業で圧倒的な優位を確保し、新たに2次電池素材事業を育てる一方、責任経営体制を確立すると強調している。
いずれも、韓国企業らしい積極性を示しているものである。こうした企業活動が韓国経済を支えていると見ておきたい。
(愛知淑徳大学ビジネス学部教授 真田幸光)