文在寅氏が選挙介入

情勢への影響を注視
日付: 2024年04月09日 12時24分

 文在寅前大統領による選挙への介入が韓国政界で物議を醸している。文氏による政治への介入は、韓国政治の不文律だった「退任した大統領の政治不干渉」という伝統を無視する行為であることに加え、すでに両陣営が掲げる主張によって分断された韓国社会の対立を助長する行為に他ならない。
文氏は釜山・蔚山・慶尚南道の激戦区を巡り、民主党候補に対する支援演説を行い現政府の批判を展開した。慶尚圏の3地区は民主党が劣勢で、ここで民主党が善戦すれば総選挙の勝利につながると考えているようだ。
文氏は、民主党カラーである青いジャンパー姿で街を練り歩き、「70年生きてきて、これほどまでに舵取りができない政府は初めてだ」「無知無能無道だ」と尹錫悦政府を批判した。また、民主党に加えて、元法相の曺国氏(祖国革新党代表)ら親民主党系の政党代表とも相次いで面会した。
こうした文在寅氏の動きに対し、与党「国民の力」からは逆に感謝の声さえ聞こえてくる。韓東勲・国民の力選対委員長は「忘れていた過去の政府の失政を国民に思い出させてくれるので感謝している。(文氏の)記憶違いではないか。我々が史上最悪の政府と認識しているのは文在寅政府だ」と皮肉を述べた。国民の力陣営では「60代保守層を刺激し、20代~30代の文氏に対する悪感情を呼び起こし、むしろ得票につながるとみている様子だ。
興味深いのは、民主党サイドからも不満の声が上がっている点だ。党代表である李在明氏のファンサイト会員の大半が、文氏の最近の言動は民主党にとって悪影響を及ぼすとの認識を示している。サイトの掲示板には「どうか(文氏が以前約束した)『忘れられた存在』になってほしい」、「逆効果だ」というコメントが並んでいる。
国民の力の内部からは「文在寅氏に対抗し、朴槿惠元大統領に自党候補の応援演説を依頼した」との話も聞かれるが、朴元大統領は自身の立場を明らかにしていない。


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