在外投票の制度見直し必要

投票率4・7%、費用は本国の30倍
日付: 2024年04月09日 12時15分

 果たして在外投票は必要なのだろうか。中央選挙管理委員会は、今回の総選挙における在外有権者の投票率が62・8%であると発表した。しかし実際の投票率は4・7%に過ぎず、その有効性に疑問を感じざるを得ない。選挙管理の問題はもちろん、違法な選挙運動や派閥の形成など、在外同胞社会の分裂が助長され、現地での協調・発展を妨げる弊害の方が大きいものとみられる。 (ソウル=李民晧)

 

 「投票率62・8%」という選挙管理委員会のデータは錯覚を引き起こす。まるで韓国国内の投票率(第21代総選挙の66・2%)に匹敵するかのように感じられるからだ。しかし、選挙管理委員会のデータは、事前に有権者として登録した者のうち、実際に投票を行った者の割合を示している。
国内と同じ基準を適用すると、在外有権者の投票率は4・7%に過ぎない。しかし、これでも過去最高の数値だ。総選挙で最初に在外投票が行われた2012年の2・5%、続く16年の3・2%に続き、20年は1・9%だった。
選挙にかかる費用も膨大だ。世界115カ国の在外国民(国外に居住する韓国国民)有権者197万4375人のうち、投票に参加した人は9万2923人だ。在外投票に投入された予算143億ウォンを1人当たりで換算すると15万3900ウォンになる。国内における1人当たりの投票予算が5000ウォン程度であることを踏まえると、およそ30倍以上を要することになる。

弊害の大きいシステム

在外選挙が法的に保障されたのは、憲法裁判所の判決(07年6月)によるものだ。当時は「在外国民の主権が回復された」として概ね好意的に受け止められ、選挙のキャスティングボートを握る存在になるものと期待された。しかし、いざ蓋を開けてみると「国民の権利」を行使しようとする在外国民の数は極めて少なかった。
今回の選挙では、逆説的な現象まで表れた。在外選挙人を8人も派遣した米国(日本は3人)の投票率は3・9%だったのに対し、在外選挙人がゼロだったインドの投票率は18・7%に達した。特定の政党を支持する者の集まりや、地域の郷友会などが現地で露骨に選挙運動を展開していたが、外国では「治外法権」により韓国の法律が適用されないため、違法な選挙運動を展開しても事実上、摘発は不可能となるのだ。
一方、主要3カ国の投票参加者は米国が1万8599人で最も多く、次いで日本が1万2406人、中国が1万1336人という結果だった。選挙人登録後の投票率は日本が50・7%で、平均より12・1%低かった。日本での投票率が極端に低い決定的な要因は、移住の歴史が長いオールドカマー社会であり、韓国情勢に疎い有権者の割合が高いという点にある。
投票率を見ると、公館員や企業の駐在員が多い東京(大使館)の場合、65・3%(9122人中5957人)で他国の平均値を少し上回っていた一方、オールドカマーが多い大阪と神戸総領事館は41・3%(7732人中3199人)で東京よりもはるかに低かった。さらに、これまで在日同胞社会の求心的役割を担ってきた民団の影響力が弱まり、民団団員の選挙参加熱が低下した点も投票率の低さに影響を及ぼしたとみられる。
本国の韓国でも、駐在国である在外同胞社会でも、国民の和合と国の発展にさほど肯定的な影響を及ぼすことのない在外投票システム。
経済的な負担や社会の分断をあおり協調を妨げる副作用を考えた場合、現状の制度を変える必要がある。今こそ抜本的な見直しが必要な時期を迎えている。

3日、仁川空港に到着した在外投票用紙。115カ国220カ所の在外投票所で投票が行われた

 

 


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