台湾の東部沖で3日に起きた地震では、多くの死者・負傷者・行方不明者が出た。当局は必死の救助活動を続けているが、震源に近い都市では建物の倒壊も懸念され、活動は制限されている▼世界もこの地震に注目している。といっても、人的被害よりもビジネス面での懸念からだ。市場シェア60%を超える巨大ファウンドリ(委託生産)、TSMCの生産がどれくらい打撃を受けたのか、地震の直接的な被害がない国も、無関心ではいられないのである▼昨年、TSMCの取引先1位はアップルで、売上全体の25%を占めた。それ以下の取引先にも世界の錚々たる企業が名を連ねる。TSMC1社の工場が稼働停止になるだけで、世界の半導体サプライチェーンが混乱するのである▼半導体分野は、これまでサムスンをはじめとする韓国企業が世界的に圧倒的なシェアを占めていたが、需要の変化などから、韓国半導体産業のグローバルな競争力は失われつつある▼今回の選挙では与野党とも半導体産業を後押しする公約が目立った。「国民の力」は、新規設備投資に対して主要競争国の支援に相当する直接的な補助金の支給を推進し、「共に民主党」は、システム半導体(非メモリー半導体)と先端パッケージングに対する支援を拡大するとした▼尹政権は発足以降、半導体サプライチェーンの構築と、国産化と脱中国政策に注力してきた。半導体は安全保障にも大きく関係する。官民一体となったこういった取り組みはもっと評価されるべきだろう。