在日本大韓民国青年会は現在、宮城・東京・神奈川・千葉・愛知・兵庫・大阪・福岡の8カ所に拠点を持ち、民団員を中心にした青年(18~35歳)のための組織。各地方本部会長と中央の常任委員会が一堂に会し、新年度の方針を議論する「全国会長会議」を東京で開催した。在日韓国人の若い世代が目指す目標や方向について真剣に議論された。
活発な議論で課題解決図る
東京の韓国中央会館で7日、「第97回全国会長会議」が開催された。全国から青年会各地方本部会長と中央の常任委員会が集まり、新年度の活動方針について議論した。
はじめに国民儀礼・国歌斉唱・黙とうを行い、簡単な自己紹介ののち、中央の四つの部による報告と討論に移った。
報告に先立ち金佳恋・神奈川県地方本部会長から、休会となった山梨県の処遇をめぐり質問があった。地方活性化を目標に掲げながら、昨年の神奈川の復会から今年の山梨の休会という現状に直面し、今後の方針について考えていくところから議論が始まった。
■各部会から報告と提案
まず総務部の報告を行った文英壽・中央本部副会長は、各地方本部でも使えることを狙い作成した賛助を受けるためのマニュアルのたたき台を提案。各会長には、それぞれの地域での庶務全般や総務部としての役割の理解を向上させるための定例会議の開催を計画している旨を伝えた。
つぎに組織部の報告を鄭昌晃・中央本部組織部長が行った。青年会の一般会員を対象にしたアンケートを地方ごとのLINEグループなどを通じて実施し、人材データベースの作成や、既存のリストや卒会者情報を更新していくなど、会員に対する構成員情報の「見える化」を進める。また中央との連携を密にし、全国行事にもフィードバックしていくという見通しを述べた。
続いて企画事業部からの報告を郭佳人・中央本部企画事業部長が行った。青年会の幹部を対象に、在日韓国人としてのアイデンティティーを高めることを目的にした研修会の開催を提案。開催時期も具体的に、今年6月29日を第1回の開催候補日として以降、毎月月末に企画事業部のメンバーが講師となって在日の歴史やトレンドに対する理解を深めるための計画について、具体的なスケジューリングも交えて説明した。また11月に予定している母国訪問の計画についても説明した。
最後に宣伝部の李将浩・中央本部副会長が報告。「青年会員の増加」を最終的な目標(KGI)とし、青年会の認知度向上やファン化を図る指標(KPI)を設定して各種SNS活用やメディアとの交渉など、マーケティング力を増強するための方案を提示した。
郭佳人・青年会中央企画事業部長はアイデンティティー向上のための幹部研修会実施を提案
■会長交えて議論と課題
すべての部会発表は質疑応答を含め、報告者の発表よりも討論の時間が長く有意義なものとなった。また、郭玹瑀・東京地方本部会長は積極的な問いを報告者に投げかけ続けた。
申レシル・宮城県地方本部会長や、李尚勲・福岡県地方本部会長は、それぞれの青年会が抱える会員同士の意識の違いから、部会に割り当てられる役員の確保が難しい現状について率直に話した。
民団地方本部の行事との関わりや、それぞれの会長が抱える事情から、青年会として活動できる範囲については、実現可能な領域を模索しながら中央との関係性を高めていくという方向が示された。
会議に臨席した金泰泳・東洋大学社会学部教授は「組織力のきびしさが課題になっている日本社会全体の問題について、青年会という集まりが果たしている役割を今日は知ることができて嬉しかった。在日コリアンのための短・中・長期的目標を掲げ、変革を起こせるよう今後も取り組んでもらいたい」と話した。
討論では、はじめの提案が振り出しに戻りかねない多くの批判が飛び交った。ただ、その方向性は各地の会長がそれぞれの現状に照らして中央の舵取りに疑問を投げかけるという〝修正案〟を求めたもので、反対意見のみが述べられたのではなかった。
今日の真剣な議論が日本で暮らす同胞のアイデンティティー確立と向上に資すことを期待したい。
会議後の集合写真