ChatGTPなどに代表される生成AIの普及に伴い、高帯域幅DRAMメモリー(HBM)の需要が急激に増加している。長らく停滞していたメモリー市場の回復への寄与にとどまらず今後、半導体企業の大きな収益源に成長していくことが期待される。
人工知能(AI)技術の覇権競争が世界規模で激化、世界的に需要が高まってきているなか、注目されているのがAI開発に不可欠な半導体高帯域幅メモリー「HBM(High Bandwidth Memory)」だ。
このメモリーはデータ処理速度を飛躍的に向上させただけでなく、容量の拡大も可能とする。データを効果的に伝送でき、消費電力は既存のDRAMより少ないのが特徴。そのためAI用のGPUにはHBMが大量に使われており、AIのデータ処理になくてはならない必須品となった。HBMの価格は従来型DRAMの6~7倍で、企業にとっては利幅が大きい。
HBMは2013年にSKハイニックスが開発したことから、韓国企業が同市場を独占してきた。
市場調査会社であるオムディアによると、今後DRAM市場はAI関連の半導体需要の拡大が確実なことから1000億ドル以上の市場に成長すると予測されている。パソコンの登場でDRAMメモリー市場は年間400億ドルの規模に成長。その後、スマートフォンの普及で600億ドルの市場規模にまで拡大した。
今後、AIはさまざまなデジタル機器に搭載されると見られており、DRAMメモリー市場は爆発的に成長すると予測されている。そのコアとなるのがHBMだ。
台湾の調査会社TrendForce(トレンドフォース)によると、HBMの市場シェアは22年時点でSKハイニックスが50%、サムスン電子が40%、マイクロンが10%と韓国企業が実に90%のシェアを占めている。
そういったなか、米Micron Technology(マイクロンテクノロジー)が先行する韓国2社を猛追している。同社は2月26日、HBMの次世代品「HBM3E(3e)」型の量産を始めたと発表した。同年上期中の量産開始を予定するサムスン電子に先行した形だ。
マイクロンが量産開始を発表したHBM3E型は、SKハイニックスが13年に開発したHBMの第1世代品から数えて第5世代に当たる。さらに同社HBMはファウンドリー(委託生産)1位企業である台湾TSMCに供給されると見られている。
オープンAIの創業者サム・アルトマン氏は莫大な資金を集めてAI向け半導体開発を行うと見られており、その額は7兆ドルとも言われる。世界の投資資金はAI分野に流入している状況だ。アルトマン氏はAI向け高性能半導体の生産施設を数年内に10カ所以上、建設した後、TSMCに運営を任せる意向であるとも言われる。
一方、SKハイニックスはキオクシアホールディングスに対し、AI向け半導体メモリーを日本で生産する協業案を打診している。キオクシアと米ウエスタンデジタル(WD)が共同運営する日本の工場で生産を想定。
キオクシア側は半導体市況やWDとの関係も踏まえ、対応を検討する構えだ。
AI向け半導体メモリーを巡る競争は今後、さらに激化するとみられる。