グローバル化した現代の競争環境において、企業・人材ともに海外への進出、他国での活躍が期待されている。一方で、高度専門人材の流動性が高まり、知的財産が他の企業や他国に流出する事態が問題視されている▼半導体をめぐる技術流出がいま韓国で大きな問題として懸念されている。昨年はサムスン電子の元部長が半導体の技術を中国企業に流出させたとしてメディアを賑わせた。今年に入り、SKハイニックスで半導体設計業務を担当していた元研究員が、ライバル企業に移るのを裁判所が禁止する仮処分決定を下したことも話題になった。この研究員は、退職時に2年間転職禁止という誓約書を書いたが、ライバル企業に役員級待遇で入社した▼退職後の従業員の競業行為をどこまで制限できるかは、難しい問題だ。退職後の競業行為は広く認められている一方、企業側は退職後にも「競業避止義務」を課すため、就業規則に定めたり、退職時に誓約書等を書かせることで制限をしている▼韓国産業通商資源部は昨年8月、国家先端戦略産業法に基づいて「専門人材」を指定・管理する制度を導入した。先端戦略産業企業の職員のうち、中核人材を専門人材として政府が指定すれば、企業は彼らと秘密流出防止、海外転職制限を約束する契約を結べる▼先端技術は国の経済的な発展だけではなく、安全保障とかかわるものも多い。官民が力を合わせて人材の海外流出を防ぐシステムを整えなければ、先端産業の技術力を守ることはさらに難しくなる。