パチンコ業界が訪日客取り込みへ

業績回復の「切り札」に期待
日付: 2024年03月12日 11時45分

 コロナ禍の水際対策が緩和されるとともに、急激な円安が進んでいることで、インバウンド(訪日外国人客)需要が順調に伸びている。これまでパチンコ業界は訪日客の取り込みや対策が遅れていたが、この好機を逃すまいと積極的に動き出している。
パチンコホールの市場規模は2013年から20年まで8年連続で右肩下がりとなっている。「遊技産業レポート2023」によると、少子高齢化によるパチンコ参加人口の減少が主な要因とされる。
観光、飲食など、多くの業種が訪日客取り込みに躍起になっているが、パチンコ業界は対策が遅れていた。しかし業績回復の「切り札」として取り組みは欠かせない。

店舗ツアーに注目
最近注目されているのがパチンコ店向け外国人客受け入れコンサルティングを提供するグローバルパチンコの「訪日客対象のパチンコ店案内ツアー」だ。22年9月からツアーを始め、これまで延べ170人が参加している。
長北真社長は、店舗前で入店をためらっている訪日客が目に付いたことから、一人8000~1万2000円でツアーを企画。参加者は「遊んでみたかったが、日本語表記だけで入りづらかった」「費用がいくらかかるか分からなかった」など、パチンコ店の敷居の高さを訴えた。ツアー参加者は「クレームはなく、ほぼ全員が満足している」(長北社長)と手ごたえをつかんでいる。
同種のツアーは、中国の旅行会社が中国人訪日客向けに実施するなど、徐々に注目されている。

マルハンが先駆け
新たな取り組みのように思えるが、マルハンが同業他社に先駆けて、新宿東宝ビル店オープンの15年4月から訪日客対応を始めている。漫画でパチンコの楽しみ方や遊び方を説明した韓国語、中国語、英語のガイドブックを制作したほか、外国語対応スタッフも配置。18~19年ごろには、なんば新館店とともに独自の体験ツアーも実施した。
同社の調査によると実際に体験した人のうち、約半数が再訪を希望するとともに、知人にも紹介すると回答した。しかしコロナ禍が重なって、「思うように集客が進まなかった」(同社広報)事情もあり苦戦している。
大阪ミナミのなんば新館店でも、3カ国語ガイドブックや外国語対応スタッフの配置などで地道に訪日客対応を続けているが、前田孝道店長は「大阪を代表する繁華街で訪日客が多く入店するが、遊戯をせずにそのまま出てしまう」と売上げ増には結びついていない。前田店長は「パチンコは日本独自のもので本国で馴染みがないとともに、機種が多様すぎて複雑なため、どう楽しめばいいのか分からないのだろう」と分析している。

大きい潜在需要
思うように訪日客を取り込めない要因を、グローバルパチンコの長北社長は「各社で取り組んでいるが実績が上がらなかったことを理由に、明確な施策を打ってこなかったことと、対応のための人材を採用、育成するコストが、リターンに対して見合わなかったことが大きい」と考察している。そのうえで「インバウンドの潜在需要は大きい。世界的にみてカジノは外貨獲得を目的としている。しかしパチンコは独自の形で業界が成立した。本来はインバウンド向けに伸びていくのが、正しいのではないだろうか」と提言する。

気長な取り組み
前田店長も「売上げ増とともに、帰国後に体験を口コミで伝えることで、新たな集客につながればいい」と期待を込める。「周辺の他社の店舗でも、独自にガイドブックを配布するなど訪日客獲得に動いている」と徐々に広がりをみせている。
長北社長は「パチンコ業界全体でインバウンドへの取り組みは遅れているが、それだけに伸びしろは大きい。特効薬はないが、地道に種をまいて育てていくことが大事だ」と未開拓の潜在市場への気長な取り組みを訴えている。


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