外国語を学ぶということは、その国の文化や歴史を学ぶということでもある。しかし韓国にとって、日本だけは「例外」だ。日本語が得意な韓国人は多いものの、日本文化を理解している人は少ない。
在日同胞2世である金照雄・韓国時事日本語社顧問の新刊『日本人の死に方』は、そんな問題意識から生まれた。京都生まれの金氏は、大阪外国語大学と延世大学で韓日の文学を専攻し、それぞれの違いが鮮明であることを知った。
同書は、日本の古典文学、中でも「辞世」を韓国に紹介したいという長年の思いが結実したものだ。一人の人間が死を前に書く辞世の句は、詩としての魅力に加え、韓国で市販されている日本関連書物では扱われない日本人の死生観や文化を理解するための指針になると信じている。著者は、韓国には辞世という概念が存在しないため、「遺言時調」と翻訳した。
本来は100人の辞世の句を取り上げるつもりだったが、作者の人物像と歴史的背景を説明するため、やむを得ず34人にまで減らしたという。日本の歴史の流れを通観できるように、登場人物はあえて時代順に並べた。
金照雄氏は「遺言時調に映し出された日本文化の特性を知ってもらうことで、韓日両国間の対話と交流に少しでも役立ててほしい」と期待感を示した。(ソウル=李民晧)