過去に例のない2つに分裂した中央3機関長選挙の投開票まであと7日。10日に福岡から始まった合同演説会も、18日の東京まで全国6カ所で2陣営がそれぞれ舌戦で火花を散らした。有権者である中央委員、代議員、選挙人には、各候補の所信を聞いたうえで、しっかりと判断してもらいたい。
民主的な手続きである選挙で選ばれたのであれば、どちらの陣営が3機関長に就いたとしても、団員として支持していくことになる。しかし懸念が残る。
東京の韓国中央会館で18日に開かれた合同演説会であいさつした中央選管諮問役の駐横浜総領事館の金玉彩総領事は「今回は民団の歴史上でも異例の選挙。もし3機関長が誕生して和解でなく、紛糾したらどうなるか。選挙後のことを考えてほしい」と懇願するかのように言葉を発した。激しく対立した2つの勢力が選挙を経たからといって、簡単に和解できないのではないかという不安からくる心情を吐露したものだろう。
もしかしたら脅しのようなことも含まれているかもしれない。民団には年間8億円ともされる韓国政府からの支援金が支給されている。紛糾団体と判断されると、打ち切りもあり得る。昨年末に韓国大使館が仲裁に乗り出した時には、打ち切りをほのめかされたともいわれている。
対立によって民団が分裂することに、団員にとっての利益はない。
しかし投開票日が近づくにつれて、ますます両陣営の主張は隔たりを広げてきている。18日の合同演説会での2人の中央選管の共同委員長のあいさつに端的に表れていた。
崔鐘太共同委員長は「今回の選挙はいつも以上に大変大きな行事だ。北韓が韓国を敵国と断言している。朝総連とはっきり対峙しなければならない」と強調した。続いてあいさつした呉公太共同委員長は「今の3機関長は前回の選管が選んだ代表であって、私たちが選んだ代表ではない。民団は朝総連を吸収して、大きくならないといけない。朝鮮学校や朝総連を経て民団に入り、発展に貢献している人は全国にいる。韓国では脱北者が国会議員になっている」と、その主張は真っ向から対立している。
民団は朝鮮学校や朝総連出身者も受け入れている。しかし忘れていけないのが、同胞の間で「5・17事態」といわれる2006年の民団と朝総連の共同声明による合意だ。民団と朝総連の和解を促進し、組織の統合を通して日本で南北統一を成し遂げるという内容。審議や合意が十分でなく協議過程が不透明であり、民団内部を混乱に陥れた。
その後、朝総連や韓国大法院(最高裁)が反国家団体と規定した在日韓国民主統一連合(韓統連)の加担も判明した。当時の河丙鈺団長が朝鮮学校を卒業し、朝鮮学校教員であったことも明るみになるまで秘匿されていた。
共同声明は臨時中央大会で事実上白紙撤回され、河団長も健康上の理由で辞任したことで、急速に収束した。
民団は朝鮮学校や朝総連出身者を受け入れているが、だからこそ各候補の経歴や所信を良く精査したうえで、投票行動につなげなければならない。
民団は団員の減少に悩まされ、北韓が韓国に敵愾心を露わにする国際情勢によって難しい舵取りが必要になっている。団員ひとりひとりの見識が試されている。