金正恩の全方位の対南挑発が危険水位を超えた。金正恩は韓国の戦略的脆弱性を象徴する西海のNLL(北方限界線)を認めないと宣言、停戦協定の無力化を狙っている。北側が1973年以来、挑戦し続けてきた西海NLLは、仁川空港を始め韓国の首都圏を守るために譲歩できない防御線だ。金正恩は、核武装を背景に対南戦争準備を督励、軍に高度な準備態勢を命じ、巡航ミサイルなど海軍力増強に集中している。韓国に対して軍事挑発をしても拡戦を望まない米国が韓国軍の反撃を抑制すると計算しているようだ。
韓半島が未知の冒険と激動の時代に入った。平壌側がモスクワと協議したのかどうかは分からないが、金正恩が韓国のウクライナ支援を遮断し、尹錫悦政権が西欧の戦争を支援できない状況を作っている。
平壌側は金正恩が14日、「海鷲6型」地対艦ミサイル検収射撃を指導したと発表した。検収射撃は、西海NLLを守る韓国海軍艦艇を狙った、この新型武器がすでに実戦配備されたことを意味する。
朝鮮中央通信は15日、金正恩が「海上国境線を頼もしく守る方途を提示した」「金正恩同志が韓国の傀儡らが国際法的根拠や合法的名分もない幽霊線である”北方限界線”を固守するため各種戦闘艦船をわが水域に侵犯し、主権を侵害している事実を想起させ、われわれの海上主権を修辞的表現や声明ではなく、実際的な武力行事をもって守り抜くべきと述べた」と報道した。
金正恩が南北海上境界を「海上国境」と言及したのは初めてだ。北側が、南北を民族関係ではなく交戦国として規定したことによるものだ。金正恩が1月15日、最高人民会議の施政演説で、北韓憲法に領土・領海・領空条項の追加を指示し、NLLを無力化する海上国境線を法的に明記するよう指示したのだ。
金正恩はまた「朝鮮の西海に何本の線が存在するかは重要ではなく、是非を問う必要もない」「明白なのはわれわれの海上国境線を敵が侵犯するときは、それをわが主権に対する侵害として、武力挑発とみなす」と述べた。
平壌側は1977年「海上軍事警戒水域」、99年「朝鮮西海海上軍事分界線」、2007年「西海警備戒線」など、NLLに代わる新しい境界を主張した。現在、北側の西海上国境線は明確でない。「延坪島と白翎島の北の国境線」とだけ言及した。
金正恩が、停戦協定発効後、国連軍側の一方的な譲歩で設定、彼らが暗黙的に認めてきた事実上の海上軍事分界線(NLL)を拒否するのは、韓半島の停戦体制自体を変える狙いと見なければならない。これに対し、申源湜国防長官は16日、地上作戦司令部を訪問し対備態勢を点検、「敵(北側)が軍事境界線とNLLの南に対して挑発すれば、”直ちに、強力に、最後まで”の原則で断固として膺懲、挑発勢力と支援勢力の両方を完全に焦土化せよ」と指示した。
昨年末から「南北関係は戦争中の二つの交戦国関係として完全固着した」と主張している平壌側は、彼らの「国歌」の『愛国家』の歌詞から「三千里」という表現も削除した。「三千里」は、韓半島の最北端から最南端までを比喩的に表現する単語だ。憲法から「平和統一」「民族大団結」のような単語も削除するようにした北側が「三千里」をあえて削除したのは、韓半島全体(三千里)ではなく北側の「国境線」までが領土と主張するためだ。休戦中の南北韓では国境がないが、北側は最近「南の国境線」「海上国境線」の表現を使っている。
平壌側のこの挑戦にも、韓国の与野党は総選挙に向けての公認に集中、対北警戒と安保に対する国民的関心の喚起どころか、選挙区も確定していない。
韓国軍は来月に大規模な韓米連合軍事訓練「自由の盾」が予定されているが、西欧のウクライナ戦争支援要求に対して明確に断固として拒否していない。
大統領室は14日、ドイツとデンマーク訪問(18日から)の中止を発表した。どのような事情で首脳外交を直前に取り消したのかは知らないが、急迫した安保危機に対応するためにも取り消しは当然だ。
韓国外交部は、韓国とキューバが14日付で修交すると発表した。キューバは1949年に韓国と修交したが、59年の社会主義革命で断交した。99年、韓国政府がキューバに対する禁水解除決議案に賛成してから雰囲気が好転、近年には年間1万4000人ほどの韓国人観光客がキューバを旅行したという。キューバは韓国の193番目の修交国となり、今や韓国の未修交国はシリアとパレスチナだけだ。
平壌側は兄弟国だったキューバが韓国と修交を発表した翌日の15日、金与正名義で、岸田首相が平壌を訪問することもあり得ると、日本に対して柔和メッセージを発信した。韓米日の同盟化に猛反発し、核ミサイルをもって脅してきた平壌側が、韓半島の状況は戦争へと追い込みながら、日本に対しては態度を表変させたのは岸田政権の弱点を利用する攪乱策だ。