電気自動車(EV)市場に異変が起きている。マーケットが急速に縮小しているのだ。それに伴い各メーカーは新規株式公開(IPO)の撤回、将来の生産計画の見直しを迫られている。EVの減速はバッテリー市場にも影響を及ぼす。EVバッテリー産業はポスト半導体との期待が高かった。多くの韓国企業も次世代を担う産業として多額の投資を行ってきたが、世界的な需要の停滞が及ぼす影響について、EVおよびEVバッテリー市場の現状を探った。
米国で「EVシフト」の減速感が日増しに高まっている。
米テスラは1月下旬、2024年は販売台数の伸び率が「著しく鈍化する」との見通しを示した。
ゼネラル・モーターズ(GM)メアリー・バーラ最高経営責任者(CEO)は1月30日、同社決算を発表した後に「EVの成長ペースが鈍化しているのは事実で、それによってある程度の不確実性が生じている。当社は需要に見合った生産を行う」と述べた。
フォード・モーターもEV市場の成長が減速していることから、生産計画を下方修正した。
米国のメジャー自動車メーカーが一様にマーケットに対し、ネガティブなコメントを発表するのは異例だ。
背景には世界的な景気後退がある。金利上昇やインフレ圧力で、消費者は支出を抑制している。旧来の化石燃料車に比べて価格の高いEVは、富裕層を中心に利用が拡大していった。中所得者に対しては、購入時に補助金を支給した国も多かったが、それも減少傾向にある。韓国でも6日、改正案が発表され、EV補助金の上限額が680万ウォンから650万ウォンへと縮小された。バッテリー出火の懸念や充電施設などのインフラ不足も需要を減退させている。世界的な需要の停滞は新規株式公開の撤回、生産の削減といった重大な影響を自動車メーカーにもたらしている。
世界のEV市場の成長率は21年に117・1%でピークに達した後、今年は23・9%まで落ち込むとの分析も出ている(現代自動車グループ経済産業研究センター)。
こういった状況のなか、EV最大手のテスラと比亜迪(BYD)が年明けから値下げを断行した。現代自動車グループも米国でEVの価格を最大7500ドル下げて販売することを決めた。今後、EV市場では過酷な価格競争が展開されるとみられる。
EV市場の成長鈍化は当然、EVバッテリー市場にも影響を及ぼす。
現代自動車グループは昨年度、史上最高の業績を記録するなどEV市場の縮小の影響はいまのところ限定的だが、EVバッテリー企業はすでに業績に陰りが出ている。
韓国関税庁と産業通商資源部などが4日、明らかにしたところによると、昨年の二次電池関連輸出額は98億2600万ドルで前年比1・6%減少した。二次電池輸出額が前年比で減少したのは15年の3・3%減から8年ぶりだ。減少率は低いが、ポスト半導体産業として期待され多くの企業が多額の投資を行っているだけに数字以上にその衝撃は大きい。二次電池関連の貿易収支の黒字幅は19年の58億3000万ドルをピークに、昨年は10億ドルに急減した。
今年1月の輸出額は前年比26・2%減とマイナス幅が拡大しているのも懸念材料だ。韓国政府が15大主力輸出品としている品目のなかで、二次電池と無線通信機器のみ同月の輸出が減少した。
現在、サムスンSDI、LGエナジーソリューション、SKオンの韓国バッテリー3社で世界のEVバッテリー市場の4分の1以上のシェアを占めている。昨年、3社は米欧での工場稼働を本格化したが、今後の動向が注目される。