縮小する保育・教育の現場

英語幼稚園は全国で増加
日付: 2024年02月08日 10時02分

 子育て世代が円滑な勤務や再就職を行う上で、保育園・幼稚園などの利用は欠かせない。韓日での両施設の運営・構造は似ているが、社会的なニーズに基づく違いがある。近年の特徴として、幼児期からの英語教育に特化した幼稚園は増加傾向にあるという。関係者に現況を取材した。

社会ニーズ対応に課題も

 韓国では保健福祉部が管轄する「オリニチプ」(「子どもの家」の意)と、教育部が管轄する「ユチウォン」(「幼稚園」の漢字語読み)がある。それぞれ日本で厚生労働省が管轄する保育園と、文部科学省が管轄する幼稚園があるのと概ね同じ構造だ。
以下、韓国の政府系研究機関、育児政策研究所の刊行物「育児政策フォーラム」の最新号(昨年12月31日発行)に掲載された報告書を参考に、「オリニチプ」と「ユチウォン」の抱える課題や特徴について考えたい。

■「オリニチプ」運営の争点

満0~2歳の乳児から預かってくれる「オリニチプ」は、子育て世代の早期職場復帰を促すのに重要である。そのような社会的ニーズと呼応して、若者が少ない非首都圏での経営は定員を満たせず厳しいという課題が浮かび上がってくる。
「オリニチプ」の在園児数は2018年基準で141万5742人であったが、22年は109万5450人に減少した(22・6%減)。世宗市が唯一増加となったのを除くと、その他は全ての地域で減少傾向を示した。
日本のような「待機児童問題」がほとんどなかった韓国の現場を支えたのが、「オリニチプ」の設立母体が多岐にわたっているという点である。
具体的には、国公立・社会福祉法人・団体など民間・家庭・協同・職場の名称を冠した各種の「オリニチプ」が存立しているという特徴がある。18年基準で3万9171カ所あったその総数は、22年基準で3万923カ所に減少した(21・1%減)。この中で国公立「オリニチプ」が5年比で61・0%増、職場「オリニチプ」が16・2%増になった点も、社会的ニーズが反映されている。
いま問題視されているのは、減少傾向を続けた後の運営や管理体制の維持だ。若年層の勤務地域が首都圏に一極集中している現状に伴い、地方での運営持続に際しては保育士1人当たりの担当児童数を柔軟にすべきといった提案が挙がっている。

■「ユチウォン」現況の特徴

教育熱心な親が3~6歳の時に通わせる「ユチウォン」は、国立・公立・私立が基本。18年基準の総数は9021カ所で、22年基準では8562カ所に減少した(5・1%減)。
「ユチウォン」の在園児数は18年基準で67万5998人であったが、22年は55万2812人に減少した(18・2%減)。地域別の事情などは「オリニチプ」とほぼ同様。
韓国の保育園・幼稚園事情に詳しい崔禎化・韓国語教室ハングルちゃん共同経営者によると、近年顕著であるのは、英語に特化した幼稚園(略称で「ヨンユ」、漢字は「英幼」)の増加という。
一般の私立「ユチウォン」が減少傾向にあるなかで、「ヨンユ」は14年に306カ所であったのが17年に474カ所、22年には811カ所に増加した。
崔禎化さんは「20年ほど前までは、英語幼稚園といえば裕福なソウルの江南地区にあるくらいだったが、今は韓国のどの都市にもある。最近は幼稚園の経営者がいかに英語型に切り替えるか、いかにネイティブの職員を獲得するかに汲々としていると聞いている」と話した。
近年、韓国で「オリニチプ」「ユチウォン」が少子化に伴い減少しているというのは確かである。運営方針の面などで、柔軟な措置を地域ごとに取り入れるべく対策が講じられているというのが現状のようだ。
また減少傾向から外れた、社会的ニーズの高まりに基づく「ヨンユ」の増加などもあったという点は看過してはならないだろう。
英語幼稚園へと転換し、子ども一人当たりの授業料の単価を上げて生き残りを図っている経営者の苦悩がうかがわれる。英会話教室を経営する学院(塾)でも幼児向け事業を初期の頃から展開しており、新たな私教育費増大の火種となりつつある現況だ。

民間・家庭「オリニチプ」は、アパートやマンションの部屋を教室として運営することも多い


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