「デジタル印鑑」に移行へ

2026年までに必要書類ゼロ化
日付: 2024年02月08日 04時58分

 韓国で印鑑が姿を消す日が迫っている。政府は2026年までに、公的サービスの申請時に政府の保有情報の提出を免除する「必要書類ゼロ化」を導入する。これにより、官公庁に直接行かなければ発行されなかった「印鑑証明書」も、実物ではなくデジタルに切り替わる予定だ。
世界的に見て、印鑑制度がある国は韓国、日本、台湾の3カ国のみだ。日本では1878年から印鑑が使われ始め、台湾と韓国はそれぞれ1906年と14年の日本の植民地時代に導入された。他国では署名と公証制度を併用している。
実印を除き、韓国では印鑑はすでに絶滅寸前の状態だ。銀行でも印鑑を使用せず、本人のサインのみで口座を開設するケースが圧倒的に多い。決裁書類や出勤簿も印鑑の代わりにデジタルサインで通用する。
しかし、実印だけはいまだ「本人を証明するための必須手段」になっている。初めて変化を試みたのは2012年だった。政府は当時、「本人署名事実確認書」を導入した。住民センター(旧洞事務所)では指紋押印で本人確認を行い、名前のみを書けば印鑑証明書と同じ効力の文書を発行するという制度だ。一度署名を登録しておけば、その後は本人署名事実確認書をオンラインで発行することもできる。しかし、確認書の導入は失敗に終わった。利用率が、印鑑証明書発行数の5~7%に留まったからだ。今でも本人確認が必要なシーンでは、依然として印鑑証明書の提出が求められている。

 印鑑証明書の事務作業82%減

政府が今回発表した「必要書類ゼロ化」で最たる変化といえば、印鑑証明書のオンライン発行だ。印鑑証明書は過去110年間、官公庁を直接訪問し本人確認を行わなければ発行できなかった。今後は、不動産売買後の所有権移転登記の際に必要な印鑑証明書も廃止する。登記の決定権者である政府がオンラインで印鑑台帳情報を確認することができるからだ。
また、不動産取引や銀行への提出用を除く一般の印鑑証明書はオンラインで発行できるようになる。印鑑証明にかかる事務作業も82%以上軽減されることになった。現在の2608件の印鑑証明関連業務のうち、本人確認など必要性の低い事務作業2145件は段階的に廃止、整備される。目下の目標としては、今年末までに、印鑑証明書の請求業務295件の事務作業を整備していく方針だ。
2000年代初めまで年間5000万通だった印鑑証明書の発行件数は、昨年末ベースでは2984万通に減少。韓国社会が徐々にデジタル信用社会へと移行していることの現れだ。

 年間1・2兆ウォンのコスト削減

尹錫悦大統領は1月30日、主宰した「デジタル民生討論会」の席上、「デジタル化の進展が生活を変化させている半面、解決すべき課題も猛スピードで出現している。サービスの利便性とアクセス性を高め、国民の福祉の向上に視点を向けなければならない。政府がより速く、国民生活の現場に深く入り込む必要がある」と述べた。
行政安全部によると、国民が毎年発行する証明書類は7億件以上に上る。そのうち30%をデジタルで代替できれば、年間およそ1兆2000億ウォンの社会的コストが削減されるものと見込まれている。これまでの韓国社会のスピード感と経験に照らし合わせた場合、デジタル印鑑の試みは定着するものとみられる。次のステップとしては、印鑑制度の完全廃止論が浮上しそうな気配である。
(ソウル=李民晧)

 

ソウルの某登記所に設置されている行政書類無人発行機


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