南北停戦以降、両者の関係に最大の変化が起きている。きっかけは金正恩だ。金正恩は、南北関係を完全に断絶し、韓国を「不変の主敵」と憲法に明示することを明言。「南北平和統一」を否定する動きが加速している▼平壌の南北統一を象徴する高さ約30メートルの記念碑「祖国統一3大憲章記念塔」が破壊された。金正恩は15日の最高人民会議(国会)の施政演説で「見苦しく立っている」と述べて撤去を命じていた▼記念塔は平壌の統一通りにあるアーチ形の建造物で、観光スポットとしても知られていた。2001年8月、金正日が統一を願い建設したものだ。これを破壊するということは、自身の父である金正日も否定したと同然だ▼金正恩は会議で「自主、平和統一、民族大団結」といった表現を憲法から削除するように指示。「祖国統一の3大原則」を削除するということは、北韓のアイデンティティーともいえる祖父・金日成まで否定したことを意味する▼南北間の根本にあった「民族」「統一」という概念を捨て、さらには金日成、金正日を否定するということは何を意味するのか。厳しい経済状況など、内部の不満を外に振り向ける狙いではないかなど、国内統制のための政策だと見る識者もいる▼仮にこの見方が正しいとしよう。その上で、対南政策とイデオロギー、歴史までを変える路線変更作業に入ったというなら、北韓内の状況はかつてないほど深刻なのだろう。韓国は、北の暴発に対して、今まで以上の警戒と緊張を強いられることになった。