戦争か平和か。どちらかを選べと言われたら、多くの人は「平和」だと即答する。だが、本当に個人や国家の存亡がかかる局面に立った時、どちらかを即座に選ぶことは難しくなるだろう▼13日に投開票された台湾総統選・総選挙は、台湾の存亡を意識しながらの選挙となったに違いない。緊迫する両岸関係にどう向き合うか、そのリアルな選択を、台湾の有権者は迫られたといっていい▼結果、対中強硬路線の与党・民進党の頼清徳氏が次期総統に選ばた。一方で、与党は立法院での過半数維持に失敗。野党との連立を模索することになりそうだ。戦争か平和かと、単純な枠組みで捉えられるはずはないが、台湾市民の複雑な胸中を映した結果ではないか▼韓国はどうか。金正恩は昨年末、「有事の際には”核武力”を含め、あらゆる手段を動員して南朝鮮全土を平定するための大事変の準備に拍車をかけ続ける」と宣言した。尹錫悦大統領は16日、「北韓が挑発を仕掛けてくれば、何倍にもして返す」と対抗した▼北韓の軍事力は脅威だ。核兵器はもちろん、平壌からミサイルが発射されれば、ソウルまでわずか数分で到達する。米国内では「金正恩は戦争をするという戦略的決定を下した」という分析も出ているほどだ▼台湾海峡で軍事衝突が起きれば、韓日にとっても対岸の火事では済まない。台湾は中国の一部というスタンスを持つ国は多い。戦争か平和か。「平和」と即答できなくなる日が来るかもしれないことを覚悟しなければならないだろう。