昨年末、韓日の若者による対話型交流プログラム「日韓みらいファクトリーアワード2023」を開催。学生主体による次世代間交流イベントで「産学官民連携で新たな両国交流のプラットフォームを目指す」という企画。最終発表会の様子や、筑波大学の学生支援プログラムについて取材した。
筑波大の学生支援プログラムで実現
都内の国立オリンピック記念青少年総合センターで昨年12月23日、「日韓みらいファクトリーアワード2023」の最終発表会が筑波大学の同企画運営事務局の主管で開催した。当日、会場とオンラインでの合計参加者は約200人だった。
開会式典では、韓日国歌斉唱、本間三和子・筑波大学副学長(学生担当)のあいさつ、事業の経過報告、駐日本国大韓民国大使館、在日本大韓民国民団茨城地方本部、株式会社三養ジャパン、首都圏新都市鉄道株式会社などの後援・協賛団体の関係者から寄せられた祝辞が披露された後、参加学生141人(全24チーム)からなる韓日両国の若者らによるグループ別の発表会が行われた。各グループは、結成から最終発表会の当日まで約2カ月の準備期間が設けられていた。両国の学生が各チームで半々になるよう、企画側で配慮したという。
■グループ発表で企画提案
「日韓みらいファクトリーアワード2023」の特徴は、互いの国に関心を持つ学生を募集し、「日韓のときめく未来~未来志向・持続可能な日韓関係」の実現をテーマにしたプレゼンテーションを行うという設定のみを明示した点だ。
発表者は、自分たち(のグループ)が提案した企画についての説明、そのアイデア性、伝達に際しての手際の良さ、いかに共感を得るかなどの技量が最終プレゼンで問われた。
最優秀賞に輝いたグループは、「日韓未来のためのフュージョンおやつ提案」(藤本愛央さん、キム・ミンソさんら発表)をテーマに、内容としては韓日共通のコンビニエンスストア「セブンイレブン」で「ホットク」と「みたらし団子」を融合させたお菓子を両国で売り出してみてはどうかと提案した。「日本では270円・韓国では2500ウォン」といった価格設定や、表紙に選定すべきキャラクターデザイン、付録のシール類などについても細かな設定が設けられていたのが目を引いた。
最終発表会の審査員を務めた河光民・東京韓国教育院院長は、「今回の発表者の中から将来、起業する人が現れるかもしれない」と期待を述べた。同じく審査員の一人であった長井悠・タクトピア代表取締役社長は、「発表には全体的に、若者ならではの軽やかさがあった」としている。
提案内容としては、両国を舞台にした旅行・ホームステイ・キャンプ・留学・(ドラマや映画のロケ地への)聖地巡礼・ソンムル交換などをSNSやアプリ、メタバースを活用して広報や情報発信を行うといったものが多かった。審査員の一人だった裵恩英・神奈川韓国綜合教育院院長は、「韓日交流の具体化のため複数のアイデアを共有し可能性を提示した点が感動的だった」と話した。
グループごとの問題提起や企画案が多彩であったため、具体的な発表内容の詳細については運営事務局の今後の発表に譲りたい。
■企画支援者としての大学
文部科学省の「新たな社会的ニーズに対応した学生支援プログラム」(学生支援GP)に2008年度に採択されてから、筑波大学では持続して「つくばアクションプロジェクト」(T-ACT)という学生の自主性と社会性の育成を図ることを目的にした学生支援プログラムを継続している。
アワードの企画・仕掛人である筑波大学社会・国際学群社会学類1年生の寳積應公さんは、今回の企画について「筑波大学T-ACT推進室」の学生支援プログラムの承認を得て、最終発表会までの準備を入念に行った。
支援の基盤と企画の内容が相まって、今回の開催を実現できたと寳積さんや李健實・筑波大学T-ACT推進室助教は話しているが、課題も多く抱えているという。
寳積さんは「課題発見に終わらない、提案型のアワードを開催し、『未来の日韓交流を担う人材の育成』という初期目標を達成できた点は嬉しい」と話す半面、「外国には、より大きな企画を実現できている大学組織も多くある。国境を超えた真の意味での産学官民連携の難しさや、運営事務局の体制面で課題が残るため、今後改善を図っていきたい」と述べた。
李健實助教は、「アワードの企画は単純な国際交流の場としてではなく、韓国も巻き込みながら、地域・大学にとどまらずに国境を超えて交流できた企画だった。筑波大学の創基151年開学50周年記念冠事業でもあるこの企画を支援できたことには意義があった」としている。
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アワードの運営事務局が置かれた筑波大学のT-ACT推進室。左から室長の加賀信広教授・事業運営責任者の寳積應公さん・李健實助教・木田江里華ボランティアアドバイザー