移民庁設置で人口減対策

受け入れる国へ大胆な政策を
日付: 2023年12月28日 11時05分

 多くの国民が海外に移住する移民大国だった韓国が、外国人を受け入れる側へと方針転換する。法務部が設立を進めている「移民庁(出入国・移民管理庁)」が主導する。外国人を受け入れて「ニュー・コリアン」を増やし、人口が急減している現状を打破しようという計画だ。果たして移民庁の発足は人口減少を抑制する特効薬になりうるのだろうか。                  (ソウル=李民晧)

 

 「韓国で少子化によって起きる人口減少の割合は、14世紀に欧州で発生した黒死病(ペスト)による人口減少の割合を超える」
昨年末に掲載された米ニューヨークタイムズのコラムは、韓国の人口減がいかに深刻な状況であるかを端的に指摘している。
「2047年には韓国のほとんどの地方都市が消滅し、2100年には人口が2000万人にまで減少する。需要と供給のバランスが崩れ、国の経済を維持することができなくなる。外国人に移民の門戸を開かなければならない」
これは昨年6月、済州島で開かれた「大韓商工会議所フォーラム」で韓東勲法務部前長官が語った内容だ。妊娠可能な女性が一生のうちに出産する子供の数が0・7人台に留まっているという現状を打開するためには、移民を受け入れて「新韓国人」を増やすしかない、という趣旨だ。
このため法務部は、移民庁の新設を進めてきた。韓前長官は「韓国の未来のためにも移民の管轄機関が必要であり、高レベルの移民政策を推進する体制を整えるべきだ」と説いてきた。これらに関わる研究も始まっている。韓国より先に移民を受け入れてきた欧州各国の例を収集してきた。韓前長官は自らフランス・オランダ・ドイツを訪れ、移民政策の最高責任者と面会し移民受け入れによる社会的問題と副作用についてヒアリングを行った。
消滅の危機にさらされている地方自治体の反応も素早い。地方の人口減少や高齢化問題の解決においても移民の受け入れが危機回避の一案になるだろう、という期待感だ。野党勢力が強い全羅北道と全羅南道も移民庁の設立に賛同し、法務部との間で「外国人移民政策テストベッド(実験場)業務協約」を締結するといった積極的な姿勢を見せている。また、慶尚北道、京畿道の一部自治体などは移民庁の誘致について法務部に打診している状況だ。
しかし、政府が推進する「移民庁」の設立に対し、国会第1党の「共に民主党」内では反対の声が根強く、「実効性に乏しい」との意見が多数を占めている。国会議席数の半数を超える民主党が反対の姿勢を崩さなかった場合、国会で移民庁設立法案が可決される可能性は低いだろう。民主党の某職員は「4月に総選挙を控えているため、いかに妙案が出されようとも国民人気の高い韓東勲氏に対しては反対の一択である、という認識が強い」と話す。 一方、移民庁の設立構想は最終段階に入ってている。現時点における組織案は、企画調整官・移民政策局・出入国安全局・査証(ビザ)滞在局・国籍統合局などの1官4局体制だ。移民庁が設立された暁には、現在複数の省庁に点在している移民関連政策業務を総括するコントロールタワーの役割を担うことになる。昨年6月に立ち上がった在外同胞庁も同様のパターンで政府組織へと移行した。
法務部は移民政策に対し、「外国人を手当たり次第に受け入れるという趣旨ではない。移民の流入と管理・統制をシステム的に行うための政策だ」と説明している。

昨年12月6日、国会で行われた「国民の力政策議員総会」で、移民庁の新設案について説明する韓東勲前長官

 

 


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