政治の影響受けない関係めざす

姉妹都市の魅力を発信
日付: 2023年12月28日 10時35分

 今年30周年を迎える韓日都市の姉妹提携は6カ所に上るが、ここでは2カ所4地域に注目して交流の実態とその課題について考えたい。


密陽市と近江八幡市古来からの土壌で30周年

 慶尚南道密陽市と滋賀県近江八幡市の姉妹都市提携は1994年12月に締結した。前年5月に日韓親善協会湖東支部の仲介があり、両市長の間で親書交換や相互訪問の後に合意がなされた。
滋賀県の中で琵琶湖の東岸に位置する近江八幡市は、かつて朝鮮通信使が漢城から江戸を目指し往来した際、昼食休憩場所として全12回の使節団派遣のうち9回立ち寄った要衝の地だ。儒学者・雨森芳洲の出身地が滋賀県長浜市であることも有名であり、韓日交流の土壌が古来からあった地といえる。歴史・文化的には慶尚北道安東市のような条件を備えている。
姉妹都市交流としては、例年開催している「密陽アリラン大祝祭」「密陽アリランマラソン大会」への近江八幡市からの参加、「水郷の里マラソン」への密陽市からの参加といった、以前の交流があったという。だが、コロナ後のイベント再開などは実現できていないと市職員は話す。

忠州市と湯河原町温泉と広報手腕で30周年


政府間対立の影響をあまり受けず、新たな姉妹都市交流を行った事例を次にみよう。
忠清北道忠州市(当時は中原郡)と神奈川県湯河原町の姉妹都市提携は、江原道と鳥取県の友好提携と同じ1994年11月に締結した。国内有数の温泉地という共通点からの提携だ。韓国全土のほぼ中央に当たる忠州市には、全国一といわれる水質を誇る水安堡温泉などがある。
湯河原町役場は、2018年に忠州市在住の吉川由季子さんを現地の駐在員に任命し、町の公式ホームページを通じて忠州市の魅力をレポートで発信している。昨年までの連載分で40件以上の投稿がある。
韓日の自治体や組織で、ウェブ上に動画を配信しPR活動を行う事例は多くあるが、姉妹(友好)提携を有用なツールとして活用している忠州市と湯河原町の情報発信・交流実態の意義は大きい。
韓国のソウル・地方の分析が専門テーマの吉村剛史さんは「姉妹都市交流は現状、基本的には小さく行われているもので、市民すら交流の実態を知らないことが多い。日韓関係が悪くなると交流が頓挫・中断しやすい点も問題だ。今の尹政権のあと数年は先が見通せそうなので、ここで土台を作って欲しい」と話した。また「交流をきっかけに、民間で小さくとも共同事業を開始して収益が得られるようになれば、政府間の関係悪化による干渉は受けにくくなるのではないか」と展望を述べた。
新しい韓日パートナー関係を構築する土台として、姉妹(友好)都市提携の活性化が進展することを期待したい。


閉じる