韓日で「北」人権侵害を糾弾

横浜の映画祭を通じて実現
日付: 2023年12月12日 13時08分

 北韓の人権問題に携わる日本の民間団体が例年行っている映画祭の第5回が横浜市で9・10日に開かれた。韓国からNGO「勿忘草」理事らも来日した。当日行われた関係者による意見交換を振り返り、今年大きく進展した活動家らの取り組みを紹介する。

韓国NGOも来日し協力推進

 神奈川韓国会館で9・10日、「北朝鮮帰還事業64周年・第5回北朝鮮に自由を! 人権映画祭」を開催、2日間で約150人が来場した。
9日は『海を渡る友情』(1960年)、『未成年~続・キューポラのある街』(65年)、『一目娘に会わせて下さい』(76年)の3作品、10日は『忘れられた英雄たち』(2022年)、『めぐみへの誓い』(20年)、『北朝鮮・素顔の人々』(14年)、『トゥルーノース』(20年)の4作品を上映した。映画祭事務局長を務めた荒木和博・特定失踪者問題調査会代表の説明では、「9日の映画のテーマは北送事業、10日は人権問題」とのこと。映画上映後には主催団体関係者によるトークショーが両日行われた。
9日は三浦小太郎・アジア自由民主連帯協議会事務局長(映画祭副委員長)の司会で、佐伯浩明・北朝鮮帰国者の生命と人権を守る会代表理事(映画祭実行委員長)、山田文明・同会理事(映画祭副委員長)、池田文子・日本人妻自由往来実現運動の会代表世話人ら3人が登壇し、意見交換を行った。

■虚構の「地上の楽園」

佐伯代表理事は、1959年から始まり9万3340人の在日コリアンや日本人妻などを北韓に「帰国」させた運動に、日本政府がかかわっていた側面を浮き彫りにする60年代の2作品の資料的価値について言及。日本政府と赤十字社などが北送事業に加担した事実や、当時のメディアも同様の論調を行っていた点について、鋭く批判した。
池田代表世話人は、76年のドキュメンタリー映画制作に自身が携わっており、北に渡った1831人の日本人妻のうち、1997年から2000年の間に43人の一時帰国を実現させ、その間の取り組みや政府関係者との交渉などについて補足説明した。北に渡った日本人妻たちから送られてきていた、日本在住の親族に宛てた手紙のみが証拠となり、当時行った活動の主軸になったという点を改めて強調した。
山田理事は、今年10月以降に進展のあった北送事業をめぐる裁判とも関連させながら、当時の朝総連の幹部が新潟の日本赤十字センターに入り込み、「帰国船」に乗船するところまで監視し、帰国禁止や自由を制限する人権侵害行為を主導したこと、また「地上の楽園」というフレーズに代表される事実と異なる情報を流布した点など、さまざまな事実から高裁が(地裁への差し戻しを)判断してくれたと述べた。

■映画祭のための来日は初

韓国のNGO「勿忘草(ムルマンチョ)」が昨年に制作したドキュメンタリーが今回の映画祭で上映されるのを記念して、朴宣映理事長・鄭秀翰理事・車東吉理事らが来日した。
6・25戦争時の韓国軍人捕虜の救出を呼びかける「勿忘草」との交流の機会は、今年9月に東京と大阪であった。
年末の映画祭を契機に韓日NGOが再会し交流を深めた意義は大きい。来年以降も北韓の人権問題をめぐり韓日協力の活性化を期待させる映画祭となった。

『一目娘に会わせて下さい』劇中より、池田文子・日本人妻自由往来実現運動の会代表世話人が被害家族を連れて板門店から再会を呼びかけるシーン

来日した「勿忘草」の活動について、宋允復・NO FENCE副会長が通訳・紹介した


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