貿易立国である韓国にとって2023年は厳しい年となった。世界経済停滞の影響を受け国内輸出産業は大きく低迷、韓国経済も落ち込んだ。日本の経済成長率を下回るなど異例の年となったが、ここにきて輸出産業に回復の兆しも見えてきている。
◆経済成長率 年初から0・3%減の1・4%予測
韓国銀行は5日、第3四半期の実質国内総生産(GDP)の成長率(暫定値)を前期比0・6%増と発表した。0%台の低成長だが、3期連続でプラス成長となった。これで今年の成長率1・4%が現実的となった。年初には1・7%前後と予測されていたが、世界経済の回復が遅れたことから一時は1・2%前後まで下方修正された。10月から輸出が改善したことから再びプラスとなったが、21世紀に入って初めて、日本の成長率(2%)を下回ることが確実となった。
◆輸出 半導体不況が影響も10月から黒字に転換
韓国の輸出実績は9月まで前年同月比でマイナスを記録した。コロナ特需が終わり、半導体マーケットが停滞したことや、中国への輸出減少が主な原因だ。
貿易収支も昨年の3月から今年の5月まで赤字が続いた。
特に半導体企業の業績悪化が影響した。韓国経済の屋台骨を支えてきたサムスン電子の第1四半期の営業利益が95%減、第2四半期も96%減と落ち込んだ。第3四半期は半導体部門の業績が改善、77・6%減に縮小し改善の兆しを見せた。
貿易収支は半導体フラッシュメモリーやDラムなどの半導体市況が回復したことから、6月に16カ月ぶりに黒字に転換。11月には輸出実績で16カ月ぶりに半導体が前年比増を記録。貿易収支も10月から黒字に転換し、11月もプラスと2カ月連続で前年比増となった。
◆株価 2200台開始も一時、2600台まで上昇
今年のKOSPI(韓国総合株価指数)は1月2日2225・67(終値基準)からスタートした。その後、上昇傾向を続け、8月1日に今年最高値2667・07を記録。10月に米国の長期金利が上昇していることからニューヨーク市場で主要な株価指数がそろって下落、KOSPIも連動して値を下げ一時、2300を割り込んだ。韓国金融委員会は株価の乱降下を防ぐために11月6日から株式の空売りを突然禁止。個人投資家の混乱を招いた。政府は少なくとも来年6月まで株式の空売りを禁止すると発表している。
グローバルIB5行の予想では、来年は半導体市況の回復などを追い風に2670~2800まで上昇すると見られている。
◆負債 企業・家計ともに最大値を更新
韓国経済が抱える最大の問題の一つが債務。企業・家計ともに過去最大を更新している。
韓国銀行が6日に発表した「7~9月期預金取り扱い機関の産業別貸付金」資料によると、7~9月期の韓国企業と自営業者の銀行からの借入金は1875兆7000億ウォンで前四半期より32兆3000億ウォン増加し過去最大となった。
懸念されるのが自営業者の債務増加。自営業者貸付指標に活用される卸・小売り業、宿泊・飲食店業への貸付のうち非法人企業貸付残高は119兆4000億ウォンで前四半期より7000億ウォン増加した。問題は増える利子負担で返済が滞る自営業者が増加してきていること。
また、家計負債額も増大し、返済負担が大きくなっている。韓国銀行が発表した7月末時点の家計債務残高は1068兆1000億ウォンで最大値を更新している。昨年のGDPに対する家計負債の割合は108・1%。今年度末はさらに増加すると見られている。国際決済銀行(BIS)によると韓国で家計の所得に占める債務返済額の比率が史上最大を記録し、3年6カ月にわたり上昇傾向を続けている。主要国の家計部門の平均債務返済率は9・9%。韓国は今年第2四半期末基準で14・2%と集計された。米国の7・7%、日本の7・4%と比較しても高水準だ。
◆来年に向けての課題 さらなる輸出の強化必要
尹錫悦大統領は5日、「貿易の日」の記念式典で演説し、「輸出の振興がすなわち国民生活の向上」として「世界6位の輸出大国からそれ以上の飛躍もいくらでも可能だ」とし「危機を突破するためには輸出が再び底力を発揮しなければならない」と述べ、官民一体となって輸出産業の強化に取り組んでいくことを明言した。そのためには、ポスト中国市場となるマーケットを開拓することが急務となる。尹大統領は自由貿易協定(FTA)の拡大や規制革新などを進める考えを明らかにした。
韓国貿易協会が11月30日に発表した「2023年輸出入評価および24年展望」報告書では、来年の韓国の輸出は今年より7・9%増の6800億ドル、輸入は3・3%増の6660億ドルで貿易収支は140億ドルの黒字を予測している。