2020年の国勢調査の結果を見ると、日本の一般世帯数のうち、38・1%が単身世帯だという。一般世帯の一世帯当たりの人員も、2・21人と決して多くはない。
一方、韓国はどうかというと、韓国統計庁の「人口総調査」で日本と同じ20年度の統計では31・4%、22年度は34・5%と、やはり急速に単身世帯数が伸びている。
ちなみに韓国では最近、世帯の形態が変わりつつあるといわれる。血縁のない同居世帯が増えている。それは友人同士であったり、同性同士を含む同棲カップルなどだが、そうした世帯が法的に保護されないことが問題視されている。社会保障制度というものが、あくまで親族世帯を基本としている制度であるためだ。こうした非親族世帯は2%ほどというが、これからますます増える傾向にあることは間違いない。
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こうした現状を踏まえて、いまや「家族」という言葉すら古くさい、死語となりつつある、という意見もある。だが、時に鬱陶しいことはあってもやはり最後に頼りになるのが家族という存在ではないだろうか? 今回はそんな「家族」の在り方を考えさせられる作品を選んでみた。
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1995年に刊行された小説『鳥のおくりもの』は作家ウン・ヒギョンのデビュー作である。語り手である主人公のジニは12歳。両親はおらず、祖母と叔父、叔母とともに暮らしている。背景となっているのは1969年、朴正煕大統領時代の地方都市だ。本書を読んだ時の衝撃は、今も鮮明に思い出すことができる。12歳の少女が、人生というものをすでに悟りきっているところに、驚かざるを得ない。幼くして母の自殺、父の出奔を経験した少女が、そうなったのは無理からぬことかもしれないが、大人の前で(彼らの求める)12歳の少女らしさを演じ、その裏で大人たちを鋭く観察し、彼らの愚かさをシニカルにあげつらう姿が痛快だった。
2019年に刊行された橋本智保訳による日本語版は「〈生〉は悪意と悪戯に満ちている!?」と書かれた帯が印象的だ。家族に見捨てられ成長をやめてしまった少女はこの先、どのように生きていくのだろうか?
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小説に対してドラマのほうは『恋のスケッチ~応答せよ1988~』を取り上げよう。本作は2015年、韓国のケーブルテレビ歴代視聴率№1に輝き、社会現象を巻き起こした話題作だ。そこに描かれるのはまさに家族の絆であり、家族を通したご近所付き合いの温かさだ。それが視聴者の共感を呼び、本作は今もファンの間で語り継がれる人気作で、再放送のたびに高視聴率を獲得している。
主人公は高校2年生のドクソン。オリンピックが開催された1988年からドラマは始まる。その前年の6月、韓国では民主化宣言が発せられ、街は活気にあふれていた。おしゃれが大好きで、恋にあこがれる普通の高校生ドクソンと、彼女を取り巻く様々な人間模様がこのドラマの面白さだ。
中心となるのはドクソンの恋の行方だが、同じ屋根の下に暮らしていても、姉妹同士の葛藤があり、仲の良いご近所であっても、それぞれの家庭の事情があったりもする。それらが絶妙に絡まりながら進むところが、このドラマが絶大な人気を誇った理由だろう。
次回はこの2作が描く家族、そしてご近所づきあいの裏側を探っていく。