東京測地系→世界測地系 韓日米の安保協力強化

防衛産業の育成に注力する韓国
日付: 2023年12月05日 11時32分

 米韓両国の軍当局は2023年に入ってから合計9回、米韓間の合同空中訓練などを実施しており、韓国軍は、米軍基地訪問を通じて朝鮮半島に対する米国の「拡大抑止」公約を強固にしている。
米韓両国軍は23年、朝鮮半島とその周辺上空で核武装が可能な米空軍戦略爆撃機であるB52H「ストラトフォートレス」が参加した合同空中訓練を計5回実施している。米国は国際情勢の変化の中で、中国本土やロシアを意識する際に、日本と韓国を防波堤として連携する必要があり、そのために米国を軸として日米韓軍事連携も進めようとしていると見られている。
こうした中、日米韓3カ国の防衛相は先月12日に会談を行い、核・ミサイル開発を進める北韓への対応など安全保障の協力強化を議論した。各国の発表によると、3カ国による複数年にわたる共同訓練計画を23年内に作ることで一致したとしている。北韓のミサイル情報のリアルタイム共有も23年内の始動を目指し、いずれも調整を加速すると見られている。
日韓の軍事連携に懸念が残る中での動きであり、レーダー照射事件については不問にすることで日本側が納得したことにして、本件は進められていると見られる。日米韓外交トップも会談を行い、北韓がミサイル・核開発を進め、中国本土が海洋活動を活発化させる中、安全保障やその他の分野で多層的な協力を推進することでも合意している。すなわち、日本の上川外相、米国のブリンケン国務長官、韓国の朴振外相は、アジア太平洋経済協力会議に合わせてサンフランシスコで会談したのである。
筆者は「韓国は産官学金融力を合わせて、国防力強化のため、防衛品の輸入代替化推進のため、そして国防品の輸出産業化を推進、外貨獲得産業に育てていくために、国防産業強化を図っている」との考えを持っており、特に朴槿惠政権下ではこうした政策方針が本格化した。今や韓国の防衛産業は、ポーランドなどにも防衛装備品を輸出する軍需品大国として発展してきていると見ている。
こうした状況下、世界最大の防衛産業展示会である「米陸軍協会年次総会・展示会2023(AUSA Annual Meeting and Exposition 2023/AUSA 2023)」が始まった。10月9日、米国ワシントンのウォルター・E・ワシントン・コンベンション・センター前に午前9時から、制服を着た軍関係者数百人が長い列を作った。最強の軍事力を持つ米国の陸軍協会が毎年主催するこの行事は、防衛産業界ではIT・家電関連最大の展示会であるCESと同格の存在として知られている。その展示会で、韓国の防衛産業は主役の一つとして注目を集めるようになっている。韓国自身も今、防衛産業の発展に自信を持ち始めているということであろう。
さらに国際情勢が不安定化する中、軍事転用が可能な技術を中心とする技術流出が米国でも日本でも警戒される中、韓国でも当然のごとく慎重になっている。
一方で、韓国警察庁の国家捜査本部は、23年2~10月に経済安全保障を脅かす犯罪を集中的に取り締まった結果、海外への技術流出21件を含む146件を検察に送致したと発表している。
海外への技術流出の送検数は過去10年間で最も多くなっている。前年の12件との対比では75%増えたことになる。罪種別では産業技術保護法違反が6件、不正競争防止法違反が15件となっている。被害に遭った技術はディスプレーが8件、半導体・機械が3件、造船・ロボットが1件などまた、事例別にみると、外国政府が補助金を出す研究事業への申請を目的に施術ロボット関連の営業機密を流出させた外国国籍の元ロボット開発研究員が検挙されている。
米国と共に、日韓でも経済安保に関する関心と警戒感は高まっていると見ておきたい。
(愛知淑徳大学ビジネス学部ビジネス研究科教授 真田幸光)


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