韓国で隆盛のeスポーツ

新たな韓日交流に向けて
日付: 2023年11月21日 12時52分

 世界には6億人を超える「e(エレクトロニック)スポーツ」愛好家がいる。19日、「リーグ・オブ・レジェンド」(LOL)の「ワールドチャンピオンシップ」大会で、韓国の「T1」チームが新たな王座に就いた。eスポーツにおける韓国の強さの秘密と、普及に到る道筋や背景を考察する。また日本での取り組みと、今後の見通しを探る。

T1がLOLで4度目の優勝 

 ソウル九老区の高尺スカイドームで19日、「LOL・ワールドチャンピオンシップ」決勝戦が開かれた。eスポーツの二大強国である韓国と中国のチームが雌雄を決した。韓国の「T1」チームが史上最多となる4度目の優勝を飾った。同大会の韓国での開催は5年ぶり。
今年の総賞金である222万5000ドル(約30億ウォン)のうち、優勝チームは賞金総額の20%を、準優勝チームは15%を獲得した。

■環境整備で躍進の韓国

今日の隆盛と、韓国でのeスポーツ流行の背景は次のものであった。
アジア通貨(IMF)危機が発生した1997年、韓国ではインターネットが急速に普及し、巷に「PCバン」(ネットカフェのようなもの)があふれた。
ネットを利用しPCでオンラインゲームを楽しむというスタイルが当時、韓国で流行した。
98年に米国で発売された「StarCraft」がブームとなり、韓国各地で大会が開かれ、eスポーツを受け入れる土台が整った。
00年に韓国の文化観光部(現・文化体育観光部)が設立を認可し、「一般社団法人韓国eスポーツ協会」(KeSPA)が設立した。プロリーグの立ち上げやルールの制定が推進された。
行政が設立を支援したことにより、eスポーツの普及を国が後押ししていると国民は受け取り、発展に寄与した。

■潜在需要大きい日本

日本では2018年に「一般社団法人日本eスポーツ連合」(JeSU)が発足。家庭用ゲーム機がオンラインに移行するまでに、長い時間が掛かった。
一方で、「スペースインベーダー」(1978年発売)のようなアーケード版の時代から技術を磨いていた世代が、現在のeスポーツ普及に貢献しているという韓国と異なる現象が日本各地で起きている。
JeSUの設立と同じ年に、「さいたま市民シルバーeスポーツ協会」が発足。2020年に神戸市で全国初のシニア専用eスポーツ施設がオープン。高齢化が進む秋田で「孫にも一目置かれる存在」を目指すとしてeスポーツのシニアプロチーム「マタギスナイパーズ」が21年に誕生した(世界で5番目)。
熟練の技術で日本のeスポーツ普及を牽引している状況に、子や孫の世代はもちろん、世界中のeスポーツ愛好家が注目している。
eスポーツは、年代や国境の垣根を超えて、競技力で交流の輪を広げていける点が魅力である。世代間摩擦を跳ね飛ばし、言語による意思疎通の面でもAIが助けとなり、国際的な人々の交流を活発にしてくれる長所がある。
遠くない未来に、eスポーツでしのぎを削る日本のシニアと韓国の若者の熱戦を、ネット観戦できる日がやってくるだろう。
韓国では今大会の終了後の25日から光州で「全国eスポーツ大会」(賞金総額400万ウォン)と障害を抱えた人たちのための大会が催され、来月15~17日の期間にも麗水で韓日中の大会「東アジアeスポーツチャンピオンシップ」(ECEA)を開催する。


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