尹錫悦大統領は、サウジアラビア、カタールへの4泊6日の国賓訪問を終えて10月26日、帰国した。今回の中東訪問にはサムスン電子の李在鎔会長や現代自動車グループの鄭義宣会長ら約130人の経済使節団も同行した。パレスチナ紛争の激化を受け、今回の中東訪問では政治的・軍事的な議題は最小限にとどめ経済協力が話し合いの中心となった。
以前は韓国と中東地域の関係は密接だった。1970年代半ば~90年代にかけて、韓国では中東ブームが起きた。現代によるジュベール港の建設プロジェクト受注などをはじめ、「漢江の奇跡」といわれる高度経済成長時に多くの韓国企業が中東に進出、成功をつかんだ。
貿易立国である韓国は、世界の経済状況の影響を受けやすい。現在、ウクライナ戦争などの影響から世界経済は停滞、最大の貿易相手国である中国とも米中対立の余波や中国経済の減速などもあり輸出が大きく減少している。貿易の多角化が韓国経済の抱える一番の課題といえる状況だ。
尹大統領は22日、サウジアラビア国賓訪問に同行した財界人たちとの夕食会で「韓国経済が直面する複合危機も、新たな中東ブームを通じてその突破口を見出せるだろう」とし、「(原油共同備蓄事業などが)韓国経済に新しい活力を吹き込む大切な呼び水」になると述べ、中東地域との経済協力体制を強化し、韓国経済の危機を脱出するとの考えを示した。
韓国とサウジは翌23日、投資フォーラムを開催。51件、総額156億ドル相当のMOU(了解覚書)を両国企業、機関の間で結んだ。
その後、共同声明を発表。
「1962年の国交正常化以降、交易規模が400倍となり、両国間の経済協力が高い水準に到達したことを嬉しく思っている」とし、「2022年に国交正常化60周年を迎えて樹立した『未来志向的戦略パートナー関係』を引き続き深め、発展させていく」ことで合意した。
これに伴い、両国は水素経済やスマートシティー、再生可能エネルギー、未来型交通手段、スタートアップなどの分野で協力を推進していく。さらにサウジアラビア政府が進めている未来都市ネオム計画や紅海開発などの「ギガプロジェクト」関連のインフラ事業にも協力することで合意した。
サウジでの日程を終了後の25日、尹大統領はカタールを訪問。シャイフ・タミーム・ビン・ハマド・アール・サーニー国王と首脳会談を行い、46億ドル以上の契約とMOUを締結した。
両国は「建設・建築分野先端技術協力MOU」と土地・空間情報分野の新技術活用を促進するための「国家空間情報協力MOU」などを締結した。インフラ協力を高度化するためのもので、スマート建設工法と技術協力を強化する。
また新産業協力基盤を構築するために「韓国・カタール貿易、投資促進フレームワーク」を締結した。これを機に従来の閣僚級戦略協議会にサプライチェーン・デジタル・保健などの分野を新設した。「韓国・カタール・ビジネスフォーラム」も開催され、スマートファーム・太陽光・自動運転車・コンテンツ・医療・金融・プラントなど両国企業・機関で計10件のMOUが締結された。