国会議員の免責特権は公平か

150種類の特権、憤る国民
日付: 2023年10月31日 12時18分

 「フェイクニュースメーカー」と批判された「共に民主党」キム・ウィギョム議員が不起訴となり、国民の怒りが噴出している。キム議員と共に告訴されたYouTuberのみが送検され、著しく公平性を欠いているからだ。「国会議員は犯罪を犯しても収監されない」という免責特権の撤廃を訴える世論が高まっている。

(ソウル=李民晧)

 「議員の免責・不逮捕特権は度が過ぎている。特権の廃止については全面的に賛成だ」
昨年5月、共に民主党の李在明代表がメディアのインタビューで語った内容だ。李代表は昨年、大統領選挙に出馬した際も議員免責特権の撤廃を公約に掲げた。しかしその後、相反する行動を示している。検察の拘束を避けるため、李代表自らが不逮捕特権を存分に利用したのだ。
民主党では、国会議員に適用される免責特権も複数人が利用した。特に特権の恩恵にあずかったのは「大統領と法務長官がソウル・江南で夜中に酒盛りをしていた」という事実に基づかない疑惑を提起して告発されたキム・ウィギョム議員だ。明白な犯罪行為を犯したにもかかわらず、免責特権によって不起訴処分となった。
ソウル瑞草警察署は10月24日、不起訴の理由として「国会の場において、国会議員が職務上行った発言については民事・刑事責任は問われない」と説明した。免責特権は本来、かつての軍事政権時代に独裁の実情を暴く議員を保護するために作られたものであり、国民からも共感を得ていた。しかし近年、この特権が悪用され、国会の場でフェイクニュースを拡散させるためのツールに成り下がっている。

フェイクニュースで後援金増

キム議員は昨年、法務部の国政監査において「女性チェリストのいる江南区清潭洞の高級店で尹錫悦大統領と韓東勳法務部長官が酒盛りをしながら歌を歌った」との疑惑を提起した。しかし捜査の結果、虚偽であることが判明した。
民主党支持者からも「疑惑ではなくウソだったのであれば謝罪すべきだ」との声が上がった。するとキム議員は「誠に遺憾。ただ、またあの日に返ったとしても同じ疑惑を提起せざるを得ないだろう」と語った。つまり、「例え犯罪だとしても、免責特権があるから今後も虚偽の事実を拡散する」と言ったも同然だ。
その後もキム議員は数回にわたって疑惑を提起をしたが、そのほとんどがフェイクニュースだった。一方でキム議員は経済的な恩恵も享受している。民主党員の支持を得て、昨年の後援金が上限の1億5000万ウォンに達したのだ。今回拘束されたYouTuberもフェイクニュースを拡散させ、相当な収益を上げた。
「批判されてもなお左派として活動する理由? 儲かるからさ」という皮肉めいたジョークがある。民主党内では、キム議員が来年の国会議員選挙で公認されたとしたら、フェイクニュースを拡散させた功績が認められたからだろう、との皮肉もささやかれている。

150の議員特権を享受

国会議員が享受する特権は150を超える。年俸の高さに加え、9人もの補佐官を雇うことができる。医療や交通などといった生活面の恩恵も数多い。中でも問題とされているのが免責特権と不逮捕特権だ。免責特権は、国会で職務上行った発言と表決に対する責任が問われないもので、不逮捕特権は会期中には国会の同意なく議員を逮捕することはできない、という制度だ。
しかし昨今、免責特権は自党の政治的利益を獲得し、フェイクニュースの拡散手段として悪用されているのが実情だ。免責特権が存在するかぎり、民主主義を脅かすフェイクニュースを国会議員が見境なく拡散したとしても責任を問うことは難しい。免責特権はいかなる犯罪も帳消しにできる魔法の杖になっているのだ。
皮肉なことに、免責特権を乱用してきた民主党が特権を制限するための法案を国会に提出している。国会で虚偽の事実を発信した場合、最大で180日間の出席停止処分となる、という国会法改正案だ。改正案の提出者にはキム・ウィギョム議員も含まれている。
民主党は「免責特権の撤廃」を大統領選挙の公約に掲げてきた。しかし、国会で多数派を占める民主党が同法案を本当に可決させるのか、議論の行方を見守りたい。

 

韓国の国会本会議場

 

 


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