需要高まる韓国製兵器

中東情勢の影響を注視
日付: 2023年10月24日 11時48分

 韓国株式市場で防衛産業関連企業の株価が高騰している。中東地域でイスラエルとイスラム組織・ハマスの武力衝突が深刻化し、韓国製兵器の輸出増の見込みが株価に反映された形だ。「K防衛産業」と称される韓国の軍事関連産業は今後、成長・拡大を続けることになるのか。           (ソウル=李民晧)

 

 尹錫悦大統領の就任から1周年を迎えた大統領室は今年5月、政権の成果をまとめたデータを発表した。その中で目を引くのが「防衛産業の輸出額が過去最高に達した」との記述だ。

■防衛産業輸出額、過去最高(単位:億ドル)
27・7(2018年)→24・7(19年)→29・7(20年)→72・5(21年)→173(22年)へと大幅増

尹大統領は17日、ソウル空港(京畿道城南市)で行われた「2023年ソウル国際航空宇宙・防衛産業展示会(以下、ソウルADEX)」の開幕式に出席し、「防衛産業は国防と経済を支える国家戦略産業だ」と強調した。
「ソウルADEX」は、1996年に「ソウルエアショー」としてスタートして以来、今年で14回目を迎える。開催当初から東アジア最大規模の展示会として知られていたが、今年はさらにその規模が拡大された。参加企業は34カ国550社に達したほか、開幕式に参加した政府代表団は米国、英国、ポーランド、UAE、サウジアラビア、マレーシアなど57カ国に及んだ。
尹大統領は「かつて他国の支援と輸入に依存していた国が、今では最新鋭の戦闘機を作り輸出するというレベルにまで飛躍した」と述べ、超音速戦闘機「KF―21」、初の輸出となる戦闘機「FA―50軽攻撃機」、中距離地対空ミサイル(M―SAM)、長距離地対空誘導兵器(L―SAM)などの国産兵器について言及した。さらにK―9自走砲、K―2戦車、韓国型機動ヘリ「スリオン」、陸軍のヘリ「LAH小型武装ヘリコプター」、次世代装甲車「レッドバック」、リアルタイムでの正確な攻撃を可能とする「戦武多連装ロケット」などの兵器システムを紹介し参加者の関心を集めた。
尹政権の発足以降、大統領室は政府内に防衛産業輸出専門組織を新設。現在は国家安保室が「防衛産業輸出戦略評価会議」を管轄している。

ポーランドと17兆ウォンの契約

韓国の防衛産業における最大の輸出先はポーランドだ。ポーランドはウクライナと国境を接していることから、ロシアによるウクライナ侵攻以降、国防の強化に注力している。ポーランドが注目したのが韓国製兵器だ。これまでに韓国とポーランドが契約した兵器の取引規模は約17兆ウォンに達する。軽空戦闘機や装甲車、自走砲、多連装ロケットなど、様々な種類に及ぶ。
さらには、韓国・ポーランド間で目下推進中の契約は、初回受注額の約2倍に達する30兆ウォン規模だ。また別件として、韓国企業は現在、ポーランド政府が導入を検討している潜水艦建造プロジェクトにも参加趣意書を提出している。
先ごろ行われたポーランド下院選挙では執権与党が過半数を獲得できず、両国間における防衛産業の協力体制に支障が生じることを懸念する声もある。だが、契約自体が解除される可能性は低い、というのが関係者による見通しだ。

防衛産業関連企業の株価上昇

一方で、LIGネクスワンとハンファエアロスペース、現代ロテムなど、韓国の防衛産業各社の株価は近ごろ上昇傾向を示している。イスラエル・ハマス間の武力衝突が中東全域に飛び火した場合、地域の不安定化を招き韓国製兵器の輸出が増えるものと見られているからだ。
軍事関連の消息筋によると実際、サウジアラビアが韓国製中距離地対空誘導兵器「天宮2」の購入を検討しているという。サウジアラビアとの契約が実現すれば、売上げは10兆ウォン以上にのぼると見込まれている。
中東以外の地域でも武力衝突の危険性が取り沙汰されており、関係各国の間で武器と物資の確保を巡り熾烈な争いが繰り広げられる見通しだ。不幸な「戦争の時代」が韓国の防衛産業企業にビジネスチャンスをもたらすかもしれない。
韓国における兵器の生産能力は現在、欧州連合(EU)の8倍以上にのぼると評価されている。K防衛産業が各国から注目を集めている理由としては、コストパフォーマンスの高さと納期の早さが挙げられる。老朽化した兵器システムを一新し戦力を強化させたい国にとっては、まさに好条件といえるだろう。
今年度における世界の武器購入予算は6000億ドル(期初の予測値1000億ドル)で、国防予算は2兆ドルと推算されている。

17日、ソウル空港で開かれた「2023ソウルADEX」で室内展示場を見学する尹錫悦大統領   (写真=大統領室)

 

 

 


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