半導体不況に底打ち感

サムスン減益幅縮小で株価上昇
日付: 2023年10月17日 12時59分

 昨年から続く半導体市況の不振は韓国経済に大きな影響を与えている。韓国経済の基幹ともいえる輸出の低迷を招き、今年の経済成長率は1・4~1・5%程度にとどまると予測されている。一方で今年3月以降、世界の半導体売上高は前月比でプラスの伸びを維持しており、底打ち感もみられる。サムスン電子の第3四半期の業績も市場の予想を上回り、同社や半導体関連企業の株価が上がった。

 サムスン電子は11日、第3四半期(7~9月)の業績を発表した。
それによると、営業利益は前年同期比78%減の2兆4000億ウォン、売上高は67兆ウォンで13%減少した。営業利益は前年同期を大幅に下回るものの、第1四半期6400億ウォンや第2四半期6700億ウォンから大きく改善した。前四半期の95%減益という記録的な落ち込みから回復し、売上高も前四半期比12%増加した。
予想より落ち込み幅が縮小したことが好材料と判断され、ソウル株式市場の寄り付きで同社株価は3・3%上昇した。同日の東京株式市場でも半導体関連株に買いが集まった。半導体の検査装置を手がけるレーザーテックが6%以上、上昇するなど、関連株の取引は活況となった。
米国半導体工業会(SIA)が先頃発表したデータによると、2023年8月の半導体市場規模は440億ドルで前年同月比5・8%減、前月比では1・9%増だった。前月比では6カ月連続でプラス成長した。こういった指標からも半導体市場は底を打ったのでは、とみる関係者は多い。
サムスンの業績が発表される前々日には、韓国大統領府は「米国製先端半導体製造装置の中国への輸出を禁止する広範な規制について、米政府が両社に対する無期限猶予を事実上、認めた」という声明を発表した。
米国の対中半導体輸出規制が導入された際、サムスンとSKハイニックスには1年間の適用除外措置が認められたものの、この措置の延長を巡り不透明な状況が続いていた。サムスン電子とSKハイニックスは今回の決定により、中国への輸出が禁止されている米国製先端システムを自由に調達できることになる。
大統領室の崔相穆経済首席秘書官は9日の会見で記者団に対し、「米政府の決定は、韓国の半導体企業にとって最大の貿易問題が解決されたことを意味する」と述べた。これを受けて、10日午前の取引でサムスン電子の株価は一時、2・4%、SKハイニックスは3・2%上昇した。
韓国半導体産業にとって好材料が多い。他方、半導体不況は長引くという見方も根強い。サムスン電子の主力製品であるメモリー半導体の市場はまだまだ低迷しているからだ。
ウクライナ戦争、米国の利上げによる世界的な景気鈍化の影響を受け、スマートフォンやパソコンの販売台数は縮小した。メモリー半導体でもDRAMは人工知能(AI)特需で回復基調にあるが、NANDは停滞が続く。
メモリー不振を補うはずのファウンドリー(受託生産)事業も振るわない。調査会社のトレンドフォースによると、23年4~6月のファウンドリー事業のシェアは台湾TSMCが59・6%で、サムスンは12・3%。両社の差は前年同期比で9・5ポイント拡大した。
イスラエルとパレスチナ武装勢力ハマスとの戦争も懸念材料だ。韓国は19年にアジアの国で初めてイスラエルと自由貿易協定(FTA)を締結しており、半導体装備関連の輸入関税も撤廃しており、両国の経済交流は活発だ。
韓国貿易協会によると、韓国のイスラエルからの輸入のうち最も高い割合を占める品目は半導体製造用装備で、全体の26・2%に達する。韓国は、日本など主力産業の素材・部品・装備分野の輸入依存を分散するために、イスラエルとの技術協力を強化してきた。サムスン電子とSKハイニックスなど韓国の半導体企業の供給網への影響が懸念される。


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