西欧の没落を早める中東戦争

ウクライナ支援国がイスラエルも支持
日付: 2023年10月17日 12時36分

 開戦から10日が過ぎた中東戦争は、イスラエル軍のガザ地区進入を控え、民間人の被害が急増している。イスラエルはハマスの絶滅を宣言しているが、ガザに入れば戦闘結果がどう出るか分からない。ハマスが決死抗戦すれば、パレスチナ民間人たちの犠牲に気を遣うしかない。イスラエルはすでに過剰対応という国際世論に直面しており、国内でも今回の事態をネタニヤフの暴走のためだと批判する国民も多いという。
ガザ地区での戦闘は、どれほどの死傷者数に耐えられるかが、戦闘持続を決定するだろう。イスラエルは、レバノンのヒズボラと戦闘を始め、シリアも爆撃した。ハマスはイスラエル側の民間人攻撃に対抗、テルアビブとエルサレムをロケット弾で攻撃した。イランは、イスラエル軍がガザ地区に進入すれば座視しないと警告している。
イスラエルの強硬派はイランとの戦争を辞さないという姿勢だ。イスラエルに対する緊急支援に乗り出した米国は、空母戦団2個を東地中海に派遣、戦争が拡大しないよう腐心している。バイデン大統領は、イスラエル軍のガザ地区進入、占領を牽制しながらも、イスラエルに対する支持を表わすため週内にもイスラエルを訪問すると言われている。米国は、ウクライナ戦争と中東戦争に同時に対応するだけの余裕がない。バイデンとブリンケンは特にイランの介入を防ぐために躍起だ。
サウジとエジプトは、米国の協力要請を断っている。グローバルサウスは、概してハマスのイスラエル人虐殺や拉致など反文明的犯罪は非難するものの、パレスチナ人の生存を否定するようなイスラエルの過剰、強硬対応は支持しない雰囲気だ。
ロシアと中国は、オスロ協定(1993年)と国連決議によるパレスチナ独立国の建設を促している。イスラエルと良好な関係を維持してきたプーチン大統領は、イスラエル側のガザ地区封鎖を第2次大戦当時のナチスのレニングラード封鎖と比較、非難した。
中東戦争が世界を分裂させている。EUは米国に同調、ハマスに対する報復を誓うイスラエルの支持を宣言した。ゼレンスキーのウクライナを支援した韓、日、豪州、台湾は今回も西欧と歩調を合わせている。
中東戦争でウクライナ戦争が急速に忘れられている。中東戦争で最も損をしているのはゼレンスキーだ。米国と西欧がイスラエルの支援に回ったためだ。ゼレンスキーの後方だったポーランドも選挙(15日)の結果、野党が勝利、政権交代が確実だ。
西欧は戦略的に孤立が深まっている。中東戦争が宗教戦争なら、すでに敗北だ。経済はもちろん、軍事的にも核弾頭を大幅に増やしている中国など、非西欧諸国の核能力を抑えられる力などない。


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