東京測地系→世界測地系 深刻な韓国の年金問題

2055年に基金枯渇、所得の26・1%が保険料に
日付: 2023年10月10日 12時56分

  第2次世界大戦後、日本には暫くの間、若者が多い状況が続き、いわゆる「人口ボーナス」を享受できた。日本の経済発展の一つの大きな原動力ともなった。当時の若い人たちの働きが高齢者の年金を支えていたが、少子高齢化が進む中でいまは、「少数となった若者が、人口が増えた高齢層の年金を支えきれなくなっている。年金問題が顕在化するのは、だいぶ以前から分かっていたはずだが、筆者が認識するところでは、日本政府はこの問題を先延ばしにしてきた結果、今や打つ手なく、年金支給開始時期を遅らせたり年金支給金額の減少ばかりか、”人生百年時代”をうたい、とにかく働けるところまで働き、年金を受け取らなくてもいいように頑張れと言わんばかりの動きを示していると思える。
欧米先進国でも類似した形で年金問題が生じており先日、フランスのニュースを読んでいたところ、「年金支給についてマクロン大統領は国民に対して契約違反を行っている。次の選挙ではマクロンは絶対に支持しない」とのフランス国鉄職員の声が掲載されており、デモにも参加していると書いてあった。
韓国でも事態は深刻である。
朝鮮日報の報道によると、「韓国の国民年金基金は55年には底をつき、その後は加入者が所得の26・1%を保険料として支払わねばならない」とする韓国政府の見通しが公表された。
韓国の国民年金財政推計専門委員会が発表した国民年金財政推計によると、現在の保険料率9%を維持した状態で、現役時代の平均所得の40%を老後に支給すると仮定した場合、国民年金基金が底をつく時期は55年となる。
これは5年前の同じ推計で予測された57年よりも2年早い。
年金支出が収入(投資収益を含む)を上回り赤字に転換する時期についても、これまで予想されていた42年よりも1年早い41年とされた。
文在寅前政権が任期の5年間に年金改革に手をつけなかったため、以前よりも状況が悪化したと考えられる。
年金が枯渇し赤字に転換する時期の予測は5年ごとに行われるが毎回、早まっている。年金が枯渇する年は5年前の推計では60年から57年とされたが、それが今回は55年となった。
今年生まれた子どもが今後、年金改革なしに55年を迎えた場合、32歳で年金枯渇となり、年金保険料の負担がこの時から所得の26・1%、60年には29・8%と上昇を続ける。そうなれば住宅の購入はもちろん、結婚や出産なども経済的にさらに困難になると予想されている。
赤字に転換する時期も44年から42年、さらに41年と早まっている。少子高齢化がさらに深刻となり、年金加入者数が毎年減少する一方で、受給者の数は増加を続けている。
今年の加入者数は2199万人だがその後、60年には1251万人、93年には861万人にまで減少すると予想されている。これに対して受給者数は同じ期間に527万人から1569万人にまで増え、93年には1030万人になると試算されている。
年金加入者数に対する老齢年金受給者数を示す扶養比率は今年24%だが、78年には143・8%にまで上昇する。現在は国民年金の加入者4人が受給者1人を養っている計算だが、将来は4人で6人を養うことになり、負担は6倍にまで重くなる。
今回の試算通り55年に基金が枯渇した場合、将来は年金保険料を今よりもはるかに多く支払わねばならない。年金を受給者に支払い続けるには加入者が所得から支払う年金保険料率を引き上げるしかないが、それが60年には最大で29・8%、さらに78年には35%にまで上昇する。
93年に国民年金の1年分の支給額を確保するために今から必要な保険料率を計算すると、5年前には16・02%だった数値が、今回は17・86%にまで高くなったと現状を報道している。
(愛知淑徳大学ビジネス学部ビジネス研究科教授 真田幸光)


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