米の高金利が韓国経済に与える影響

債務増や雇用・景気の停滞招く
日付: 2023年10月10日 12時55分

 米国債の価格急落、利回りの急上昇が続いている。米10年国債利回りは5%に達した。米10年国債利回りは世界の市場金利のベンチマークともいわれているが2007年以降、16年ぶりの高い水準となった。これまで市場では利上げは最終局面にきており、これ以上の引き上げはないとの見方が大勢を占めていた。だが米国債の利回りの上昇、さらに6日に発表された労働指標などの数値が好転しなかったことから、年内に追加利上げを実施し、より長期間にわたり金利を高水準にとどめるとの見方が強まっている。米国の高金利政策が韓国経済に与える影響を探ってみた。

 

 米国長期国債の利回りが上昇した要因は、米財務省が7~9月期に国債を過去最大規模となる1兆70億ドル発行したことにある。国債への需要が少ないなか、供給が増えれば金利は上昇する。
さらに、米連邦準備制度理事会(FRB)が来年の政策金利見通し中間値を年4・6%から5・1%に上方修正した。市場は早期の利引げを予測していたがFRBが高金利の長期化を示唆したことが、国債利回りの上昇を加速させた。
米労働省が6日発表した9月の雇用統計で労働市場が回復していないことが明らかになり、FRBが年内に追加利上げを実施することがほぼ確実となった。
JPモルガン・チェースのジェームズ・ダイモン最高経営責任者(CEO)は米国の金利が7%水準に上がる可能性に備えなければならないとまで話した。
米国の高金利は韓国経済にも大きな影響を与える。
尹錫悦政権はこれまで、高金利に耐えながら景気下落を抑制し、輸出市場が低迷するなか輸出回復に注力してきた。ウォン安・株安を防ぐため、韓国も米国に合わせて金利を上げてきた。直近5回連続で基準金利を据え置いているが、いまだ高水準にある。
高金利は企業に負担を与え、投資を抑制する。国債金利が上がれば社債金利もともに上昇する。信用度が低く、利息の負担が大きい社債の発行は企業の経営を圧迫。債券金利上昇に銀行の資金調達費用も大きくなり、貸出金利も上がる。企業活動が停滞すれば、雇用や景気が停滞する。さらに韓国の企業債務は今年6月末現在で対GDP124・1%となり、1998年の通貨危機を上回った。金利が高い債務を償還しながら持ちこたえている企業も多い。
数年間にわたって懸念され続けている家計債務も同様に問題だ。借金はさらに増えている。
韓国銀行の金融安定報告書によると、6月末の名目国内総生産(GDP)に対する家計負債の比率は推定値で101・7%となり前四半期より0・2ポイント上がった。国際通貨基金(IMF)によると、昨年末現在の韓国の家計債務の対GDP比はスイス(130・6%)に次ぐ世界2位。負債が多い状況で市場金利が上昇すれば利子費用が増え、融資の返済だけではなく、消費と投資は萎縮する。
尹政権は今年の経済を「上低下高」と予測していた。「上低下高」とは、今年上半期に景気が底を打ち、下半期には本格的に回復に向かうという表現だ。だが、米国の高金利が続けば、韓国も連動して高金利を維持しなければならず、不況が長期化する。
米国の利上げの要因は深刻なインフレにある。ウクライナ戦争とコロナ禍の影響で、原油・原材料価格が高騰しさまざまな物の価格が上がった。ウクライナ戦争も終息の見通しが立っていない。さらにここにきてパレスチナ自治区ガザ地区を実効支配するイスラム組織ハマスが行った攻撃にイスラエル政府は、8日の閣議で公式に開戦を宣言した。世界的が不安定化し、不確実性が増している。

 

 


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