第5次中東戦争は世界大戦へ拡大するか

イスラエルより安保脆弱な韓国、内部の敵を整理せよ
日付: 2023年10月10日 12時35分

 ここ20カ月間、世界の注目を集めてきたウクライナ戦争だが、NATO・ロシア戦争を覆うような世紀の戦争が勃発した。ガザ地区のハマスが7日の早朝、イスラエルを全面攻撃した。戦争が絶えない中東だが、世界大戦へ発展し得る戦争はイスラエルとイスラム間の全面戦争、宗教戦争といえる。ハマスはこれまでもイスラエルと戦争をしてきたが、今回の攻撃は従来とは次元の違う、緻密かつ大規模なものだ。イスラエルを奇襲、領土に攻め込んで無差別の虐殺と拉致を恣行した。どういう事情があったのかは明らかではないが、ハマスの奇襲を許したイスラエルは、混乱の中で数多くの死傷者を出した。イスラエルは反撃に出てハマスに宣戦布告(8日)、予備軍30万人を動員した。「血の報復」「ハマスの完全破壊」を宣言したイスラエルは、ガザ地区に対する補給を完全遮断し、地上軍を投入する態勢だ。ハマスが引いた引き金が、制御し難い連鎖反応を起こしている。世界、そして韓半島への争いの連鎖が懸念される。

 イスラエルの宣戦布告は第4次中東戦争以来、50年ぶりだ。ハマス側が軍事的に勝利する可能性はない。ハマスは外部の支援を受けても大規模な戦闘持続が難しい。ハマスが狙うのは、軍事的勝利よりも、この戦争を本格的な宗教戦争、政治戦争、世界大戦へと持ち込むことだ。ハマスが公表した「アル・アクサ洪水」という作戦名は、イスラムの聖地のエルサレムの「アル・アクサ・モスク」の近所に、ユダヤ教の「第3聖殿」が建てられるのを阻止すると宣言したものだ。
ハマス側は、緒戦でイスラエル軍の「無敵」の神話を打ち破ったことを成功的と喜ぶ雰囲気だ。その一方で、ハマスは驚異的な奇襲の成功にもかかわらず、世界中に流れた、民間人の無差別殺害や拉致など残酷なイメージのため、イスラエルの無慈悲な報復に名分を与えた。イスラエルの国防長官は「人間動物」との戦いと宣言した。あえて捕虜にせず物理的に除去し、ハマス支援勢力も攻撃、除去するとの宣言に聞こえる。
ハマスが引いた引き金は、すでに予測不能の連鎖反応を起こし始めた。国際社会は、交戦双方を仲裁できる状況でない。まず、ハマスの性格に対する規定から「テロ団体」という西欧の主張と、国連も認める「独立を追求する国際法上の合法的な武装闘争団体」とが対立する。ガザ封鎖(2008年完成)を巨大な「監獄」「ガザ・ゲットー」と非難してきた側は、今回の戦争の根源はイスラエルと中東地域に分裂と対立の種を蒔いた英・米など西欧だと主張する。
レバノンのヘズボラは、ハマス側でイスラエルを攻撃、イランもハマスを支持した。一方、米国はイスラエル支援を宣言、80億ドルの緊急支援を発表し核空母を派遣した。
アフガンが提供したか、ウクライナから流れてきたかは分からないが、ハマス側の武装に米製武器が多いのもこの戦争の複雑性を物語る。この戦争は、米国が追求したイスラエルとサウジアラビアの関係進展構想を完全破壊する。イランやカタールなど、シーア派の諸国がハマス支持を宣言したが、EUはパレスチナ支援中断を決定した。
米議会が連邦政府のシャットダウンを避けるために行った緊急資金承認からウクライナ支援予算240億ドルが外れる(1日)や、EUは2日、27カ国の外務長官会議をキエフで開催、ゼレンスキー側支援を決めた。米・英は自ら触発した西欧の分裂、崩壊を防ぐため躍起だが、西欧がイスラムを敵対視すれば、世界大戦を招き得る。
BRICS陣営の「結束」にも混乱が生ずる。中国が「仲裁」したイランとサウジの関係は対立するしかない。テュルキエはアゼルバイジャン・アルメニア戦争などで米国との衝突も辞さない姿勢に出た。
問題は韓半島だ。韓国が抱えている安保上の脆弱さはイスラエル以上だ。平壌側が韓国への核先制攻撃を公言した状態でも、主思派など反逆従北勢力や従中派が国会を左右している。選挙と司法システムは国民的信頼を失った。国情院など国家安保の司令塔も国家危機を警告、管理できる状態でない。尹錫悦政権は、独自の防御力より、アフガン戦争やウクライナ戦争などで限界(無能)をさらけ出したバイデン政権に頼っている。尹政権は同盟との結束強化の前に内部の敵を片付けよ。

 

 


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