デイリーNK高英起の高談闊歩

北が頼るロシアとの関係強化は破滅の歩み?
日付: 2023年09月26日 13時05分

 北韓の金正恩総書記が9月12日から17日にかけてロシアを訪問した。金正恩氏を乗せた専用列車は13日、ボストーチヌイ宇宙発射場に直行し、プーチン氏が出迎えるという歓迎ぶりだった。二人は首脳会談を行い、宴会では互いに祝賀演説をするなど親密ぶりをアピールした。
金正恩氏は、「国家の戦略的利益をしっかり守るための歴史的偉業の遂行に奮い立った全てのロシア人民に朝鮮人民の戦闘的敬意」など、ウクライナ侵攻を称えるメッセージを送った。プーチン氏は、ロシアのメディアに対して北韓の人工衛星開発に対して支援を表明し、2国間の軍事・技術協力の機会があると発言した。北韓は核ミサイル開発、ロシアはウクライナ侵攻によって国際社会の反発を招いている。ロ朝会談に対して米国を中心に西側陣営は警戒しており、さらなる孤立を招きかねない。反発を覚悟して行った会談の狙いは、米欧が主導する国際秩序に真っ向から対立する意思を示すためと思われる。
米国は先月、韓日首脳を歴史的な会談が行われてきたキャンプ・デービッドに招き3カ国首脳会談を行った。会談ではとりわけ中ロ朝の脅威に対する安全保障体系の構築と連携強化を確認した。韓日米に対抗するためにも、金正恩氏とプーチン氏は互いの結束を再確認する必要があった。
とりわけ金正恩氏にとって就任以来、北韓の最高指導者として認めてきたプーチン氏への信望は厚く、機会があれば会談をしたかったはずだ。中国の習近平氏が、なかなか金正恩氏と会おうとせず冷徹な姿勢をとっていた期間も、金正恩氏とプーチン氏は頻繁に親書をやりとりしていた。中国に先んじてロシアに初外遊する可能性すらあった。2018年に中朝、南北、米朝首脳会談が実現して以降は、金正恩氏も中ロだけでなく西側諸国との関係を模索しようとしていた節がある。しかしトランプ政権が交代したことによって米朝関係はいったん白紙に戻り、金正恩氏の対外戦略は手詰まり状態に陥った。
そうこうしているうちに、韓日米は着実に連携強化に向かおうとしている。このままでは、またもや置いてきぼりにされる危惧を抱いただろう金正恩氏は、プーチン氏と信頼関係を再確認したかったに違いない。四面楚歌におちいっているプーチン氏も金正恩氏との関係を改めて強化し、さらに中国を加えて3カ国の結束で韓日米に対抗する構図をつくり出すという思惑があるのではないだろうか。
ロ朝が軍事協力を進め、ここに中国が加担すれば、韓日米の安保上の脅威は格段に増すが、北韓の慢性的経済難が解決するわけではない。金正恩氏は軍事的協力の見返りとして、喉から手が出るほどほしい原油を求めると思われるが、無尽蔵に供給されるわけではない。ロ朝関係が強化されたとしても「弱者同盟」のレベルにとどまりそうだ。
それでも金正恩氏はロシア、中国へ依存しようとする。もしかすると金正恩氏は米朝、南北関係の破綻に絶望して、西側社会との決別を覚悟しているのかもしれない。金正恩氏が中ロ陣営の一員として、韓日米に対抗しようとしているのなら北韓の未来はより暗くなるだろう。


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