「国民主権を否定」と扇動

政府を攻撃する李在明の詭弁
日付: 2023年09月12日 12時22分

 野党「共に民主党」が与党と現政権に対し「国民主権を否定している」と批判し、世論の扇動に乗り出した。「主権在民(主権は国民にある)」を定めた憲法第1条を掲げ、政権弾劾論へと発展しかねない雰囲気だ。野党の操るレトリックの矛盾と狙いについて考察する。

(ソウル=李民晧)

 

 「韓国国民5000万人が全員、主権者として権力を行使する場合、大韓民国は無政府状態になるだけだ」
5日、国会の対政府質問で「大韓民国の権力は国民に始まり国民に終わる、という憲法の精神に何か問題があるのか」と尋ねたユン・ゴンヨン議員(共に民主党)に対し、金暎浩・統一部長官は「それは簡単な問題ではないと思う」と回答した。
金長官はさらに「大韓民国憲法第1条第2項が示す国民主権論(主権在民)というのは、主権の所在と行使を区別している。後段で述べられているように、国民は主権を所有しても直接的に行使することではない、ということだ」として「国民は投票によって大統領を選び、地方区の代表となる国会議員を選び、その代表を通して権力を行使する」と説明した。

李在明と民主党の矛盾


これを受け、共に民主党の李在明代表は6日、党最高委員会議で「前日の本会議場で首相と長官が国民主権について語っていた。しかし、民主共和国大韓民国、すなわち主権国家の長官、首相としてふさわしい発言なのだろうか。統一部長官は『韓国民5000万人が全員、主権者として権力を行使する場合、大韓民国は無政府状態になるだけだ』と述べていた。これは明らかに国民主権を否定したもので、憲法第1条にも反する発言だ」と批判。
李代表はさらに「大韓民国は民主共和国だ。主権は国民にあり、すべての権力は国民から生まれる。この当然の原理を統一部長官は否定している。明らかに全体主義的な考え方だ」と述べた。
加えて李代表は「国務委員が国会で国民主権を否定し、憲法を否定したことは到底看過できない。国民主権を否定した統一部長官を、尹錫悦大統領は直ちに更迭せよ」と主張した。
「文在寅の口」と揶揄されるユン・ゴンヨン議員も金長官に対し「全体主義的思考であり極右」「民主主義の基本を理解していない」と批判した。

 「代議民主制」を否定か

しかし、李代表とユン議員の主張はむしろ「憲法」に相反するとの指摘がある。「憲法」に対する金長官の説明は「常識的」だ。韓国の憲法は「代議民主制」を定めており、長官はその意味を正確に述べていたからだ。
代議民主制を表す代表的な職業は国会議員だ。彼らは国民を代表して選ばれた者として、国政を監視・管理し立法を行わなければならない。代議民主制に対し「国民主権を否定した」「全体主義的思考だ」などと批判することは、憲法の基礎と精神を無視した扇動に過ぎない。国会を置く目的と議員の権限を否定するということは常識的ではなく、国民に選ばれた国会議員の「不要論」にもつながりかねない。
憲法は、主権者である国民に直接国の政策を決定するよう委ねたものではない。大統領や国会議員という「代表者」を選ぶのも、国会、大統領、政府、裁判所などの「憲法機関」を独立させているのも、すべては憲法で定めている「代議民主制」に則っているからだ。

選挙は「主権代理人」を選ぶもの


そのため、李在明とユン・ゴンヨンによる「すべての国民が主権を行使するべきだ」との主張は詭弁にすぎない。それが事実であれば、李在明はなぜ国会議員に立候補し、大統領選挙に出馬したのか。彼らの主張が通るなら、大統領も政府も国会も不要となり、すべての国政案件について全国民が票決しなければならない。
ゆえに「選挙」が重要となる。直接民主主義の原則では、国民が「主権」を行使できる唯一の機会が「選挙」だからだ。選挙は主権を委任する「代理人」を選出する行為なのだ。
来年4月には国会議員総選挙が予定されている。選挙を7カ月後に控えた現時点で野党が「国民主権」などと言い出したのは、尹錫悦政府が「国民のために働かない政権」だと誹謗し、政権を貶めようとする扇動行為に過ぎない。文在寅率いる前政権は「人が優先」との甘言で国民を惑わせたが、彼らのいう「人」とは国民ではなく「自分たちの味方」に限られている、との批判に晒された。総選挙に向けて、さまざまな策を弄する野党の攻勢が始まっているといえる。

6日、政府国務委員の総辞職を求めて会見を開く李在明・共に民主党代表の支持団体


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